第5章 目覚め

緊急招集

 不思議な夢を見た。

 闇の中に、ふわふわと浮いている夢。



 ここはどこなのだろうとか、何故こんなところにいるのだろうとか、そんなことは全然気にならなかった。

 とにかくこの闇の中にいるのは心地よくて、考えることを放棄させてしまう。



 全身を包むのは、漆黒の闇と甲高い耳鳴り。

 いつもなら不快であるはずの音も、この闇の中ではなんだかとても安心するメロディーのように聞こえて―――





「おい!!」

「………え?」





 荒々しく肩を叩かれ、キリハはぱちくりとまぶたを叩く。



 身を包むのは闇ではなく、柔らかな毛布だ。

 周囲は夢の中とは正反対の光に満ちた世界で、眼前にはうんざりするほど見慣れたルカの顔がある。



「あれ、朝?」

「そうじゃなきゃ、オレがわざわざ起こしに来るわけがないだろう。どうでもいいがお前、部屋に鍵をかけることくらいしないのか?」

「ええー…。どうせ盗めるものなんてないよ。」



 答えながら身を起こし、キリハは欠伸あくびをしながら両腕を上へと伸ばす。



「おっかしいなー。いつもなら、自然に目が覚めるはずなのに……」



 レイミヤにいた時は毎朝誰かの畑へ手伝いに行っていたので、普段なら目覚ましなどなくても起きれるはず。

 こんな風に誰かに起こされるなど、何年ぶりのことだろう。



「そんなことはいいから、とにかく急げよ。」

「え、そんなに寝坊した?」



 慌てて時計を確認したが、まだそんなに急かされるような時間ではなかった。

 せいぜい朝食の時間が少なくなるくらいだ。



 いまいち現状が分からないキリハに、ルカは簡単に理由を述べる。



「緊急招集だ。十分後に会議室。」



 これで用は済んだと言わんばかりに、ルカはさっさと部屋を出ていってしまう。

 残されたキリハは首をひねるしかない。





「緊急招集?」




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