竜焔の騎士

時雨青葉

【第1部】その手に掴む剣の名は

プロローグ

友との別れ



「ねえ、これでよかったと思うかい?」





 彼はひっそりと問いかける。

 周囲は冷たい岩肌に囲まれており、彼の声はがらんとした空間に吸い込まれるだけで、問いに答えをくれる者はいなかった。

 彼は岩肌をなぞるように、視線を上へ上へと上げていく。



 ここには、長い間共に過ごしてきた友が眠っている。

 多くの言葉を交わし、色んな場所に二人で自由気ままに赴いた。

 でももう、そんなことはできないかもしれない。



 人とドラゴンとの絆は、断たれてしまったのだから。



 それは彼としても彼の友としてもけられないと理解していたことであり、一番あってほしくなかった結末でもあった。



「寂しくなるね…。でも、君は変わらずこう言ってくれるんだろう?」



 岩肌をなで、彼は微笑む。





われは、人間が好きだって―――」




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