(8)
「これ、五十嵐ちゃんの本?」
劇場で次の公演の準備を行ないながら、若手の裏方達に、事故が起きにくい作業手順を説明し、一休みしていると、ウチの劇団の中でもかなりの古株である
俺よりも、いくつか上。
貫禄のある悪役を演じる事が多い。
「そうだけど……?」
「『首都圏壊滅』の森実って、こんな小説書いてたっけ?」
「え……? いや、この作者……」
「それに、何で、森実の小説なのに……著者名が昔のペンネームなんだろ?」
「ちょっと待って……
「知らなかったの?……って、知ってる奴の方が少数派か……。たしか、小説の新人賞に投稿した時に使ったペンネームが『小松左京』だった筈だよ。あと、この出版社、何?」
森嗣は、俺が読んでいる途中だった文庫本をめくりながら訊いた。
「えっ?」
「『角川春樹事務所』って、どう云う事だろ? 角川の元社長の春樹さん、出版関係の別会社なんか作ってたっけ?」
「あのさ……その……森実が新人賞に応募した作品って……何てタイトルか判る?」
「ええっと……たしか……『地には平和を』。……ああ、本屋で探す気だったら、短編なんで、短編集に入ってると思う」
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