(3)

 都内から少し外れた場所。

 自宅の最寄り駅に着いたのは……夜の一一時ごろだった。

 その最寄り駅から……自転車なら何とかなるが歩きだとキツい距離にあるアパートに向っている途中だった。

 都心への通勤圏内だが……所々に田んぼや畑が有り、市内の移動には自家用車を使う人も一定数居るような……都会とも田舎とも言い難い地域。

 俺は、ここ二〜三〇年、そんな場所に住んでいた。

 国道から、自宅の方へ向かう脇道に入り……ん?

 自転車のランプは点けていた。

 しかし……その男は……夜だと目立ちにくい、暗めのグレーの服……そのせいで、気付くのに遅れ……。

 いや……待て……服か? 服と言えるのか、これは?

 それに……がっしりした体格に見えたので「男」と判断してしまっただけで……これでは……中に入っているのは男か女か判断出来ない。

 そいつは、あやうく衝突しかけた俺の自転車を片手で止めた。

 俺は、自転車が急停止したせいで……。

「うわあああ……」

 ハンドルから手を、サドルから腰を、ペダルから足をわざと離し……。

 空中に投げ出されたが……そいつを蹴り、その反動で、地面に着地。

 相手が、普通の人間なら、そんな真似はしない。

 だが……そいつは……。

 予想通り、そいつは、爺ィの飛び蹴りを食っても……何も感じていないようだった。

 そいつの目は……左右5対、計一〇個。全て……スマホに付いているカメラのレンズより一回りか二回りほど大きいぐらいのガラスの目だ。

 のっぺりとした顔の中央には……正体不明のセンサーらしきもの。

 SFや特撮に出て来るような……強化服に見えた。

 だが……ヒーローでも怪人でもない。

 肘と手首と膝に付いている格闘用らしき棘を除けば……無骨だ……無骨極まりないデザインだ。

 それも……兵器や戦士の無骨さではない。工事現場のクレーン者やブルドーザーを思わせる無骨さだ。

 だが……何故……?

 何故、こんなモノが現実に居る?

 どっきりカメラか何かなのか?

 これは……あの時に見た撮影用のロボットなのか?

「ご……護国軍鬼……?」

 俺は、五〇年前に俺が出演した特撮番組の……最強にして最後の敵の名を口にした。

「御老人にしてはいい動きだ。まず、1つ訊きたい事が有る」

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