雪の魔法
ヤイ
第1話 女の子とぼたん雪
ある年の、ある日の、冬。
あったかいお家の外は、雪でいっぱいになっていました。
その日は近くのお家に住んでいる、たまちゃんと、たまちゃんのおばあちゃんと一緒に雪だるまを作ることにしました。
「わーい!たまちゃん、雪すごいよ!転んでも痛くないの」
「すごいねえ。ええい!ダイブ!」
「二人とも。あまりはしゃぎすぎないようにね」
「「はーーーい!!」」
でも、でも、おばあちゃんにはいつもお世話になっていて、だから言うことは聞きたいけど「はしゃぐな」はむずかしいお願いだと思います。
「おばあちゃんもダイブしたら、こし治るかもよ!」
だって、こんなに冷たくて気持ちいいんだから。痛くないんだから。
「そうねえ。二人がおばあちゃんの分まで雪でいっぱい遊んでくれたら、腰治るかもねえ」
「あっ!じゃあはしゃいでいいんだね!」
雪に寝転がっていたたまちゃんが、勢いよく体を起こして言いました。
おばあちゃんはちょっと困った顔をしましたが、
「うん。そうしてちょうだいねえ」
優しい笑顔で、そう言ってくれました。
「たまちゃんあのね」
「なあに?」
庭をかけ回ったあと、わたしはいい考えを思いついたので、雪だるまを作る前にたまちゃんにそれを言ってみようと思いました。
「あのね。わたしママだるま作りたい」
「ママだるま?」
「うん!」
たまちゃんはきょとんとした表情をしていましたが、わたしがうなづくと笑ってくれました。
「いいよ!」
雪だまをころころ転がして、体を大きくしていきます。雨にも風にも、太陽にも負けないような丈夫な体にするのです。うでになる枝は太いものを選びます。すぐに折れるようなうでではいけません。
わたしは枝を探そうと思って、お家の外に出ました。枝を見つけるために下を向いて歩いてたら、人とぶつかってしまいました。
「わっ」
「おっと、ごめんなさい。大丈夫?」
ぶつかって転げそうになったところで、その人が支えてくれました。
その人は、すごく綺麗なお姉さんでした。
「だいじょぶです」
「そう。1人?危ないから家にいた方がいいよ」
そう言われてわたしは、たまちゃんにもおばあちゃんにも何も言わずに出てきたことに気づきました。
「あの、雪だるまのうでの、枝探したくて。大きくて丈夫なうでなんですけど」
「家の人と探したら?」
「えっと、たまちゃん今頭で忙しくて。おばあちゃんはお腰が悪いから...」
お姉さんはわたしの話を真剣に聞いてくれました。
「じゃあ、私が見つけてこようか?」
そして、笑顔で言ってくれました。
「いいの?!」
「うん。見つけたらここに戻ってくるから、あなたは友だちと待っててね」
「はい!」
優しいお姉さんが雪道をスタスタ歩いていくのを見て、わたしはお家へ戻りました。
それからしばらくして、わたしはたまちゃんと協力して、ついにママだるまが出来上がりました!
「「できた!!」」
「よくできたわねえ」
おばあちゃんが褒めてくれたママだるまは、体は大きくて、丸い目がかわいい雪だるまです。布で髪を作って、体には丸い石をはめてコートを着せてあげました。
「それで、枝はお姉さんが持ってきてくれるんだよね?」
「そうだよ!たまちゃん、一緒にお外出よう」
たまちゃんを連れて門の外へ出ると、ちょうどお姉さんが帰ってきました。手には長くて丈夫そうな枝が2本ありました。
「おかえりお姉さん」
「はじめまして、お姉さん。お家へどうぞ」
お姉さんはちょっと困ったあと、おそるおそる、というような感じで門の中へ入っていきました。
「私が枝を差すの?」
「うん!お姉さんが見つけてくれた枝だもん」
お姉さんはそれを聞くと、ママだるまを見て優しそうに笑いました。
「いいね。この雪だるま」
「ママだるまですよ!」
たまちゃんが目をきらきらさせて言いました。
「ママだるま?」
「うん!優しいわたしのママなの!」
今度はわたしが、お姉さんに雪だるまの秘密を教えてあげました。
すると、お姉さんはママだるまの顔をなでました。
次に、わたしの頭をなでました。
手袋もしてないお姉さんの綺麗な手の冷たさが伝わってきました。
「…お姉さんが魔法、かけてあげるね」
「えっ!魔法?」
「やったー!」
お姉さんはママだるまの前でしゃがむと、枝を丁寧に差していきました。
「話しかけてみて」
「うん!……ママ!」
お姉さんの言うとおり、わたしはママだるまに話しかけてみました。
すると、
「なあに?ゆきちゃん」
ママだるまが、喋りました!!
そのとき、お姉さんにお礼を言おうと思ったのですが、いつの間にかお姉さんの姿は消えていました。
冬が終わり春が来るとママだるまも消えてしまいました。
とても寂しかったのですが、最後にママとおしゃべりをして遊べたので、すごくうれしかったです。
また冬がきたら、今度はパパとお姉さんとも一緒に遊びたいです。
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