追憶の社

@gesseki

第1話

何故、村は滅びてしまったのだろうか

何故、彼女はそんな事をしたのだろうか

彼女が何を思うたかは解らぬが、其れを側から見ていたものが在った事は確かであった。


時は数刻前へと遡る

この日は祭りという名の儀式の日であった。

この村は代々、神に供物を捧げ村を存続させて来た。いや、供物とは名ばかりであり、其れは表向きの言い方である。童達は知らぬのだ。この村の神についての事実を。供物として、何を捧げているのか。無知とは時に残酷である。其れ故に、祭りだと喜ぶ。嗚呼、実に恐ろしい。祭りが始まれば、童達の嬉々とした声が響く。微笑ましかろう。そして、其れが胸を抉り、悲痛な叫びを上げる。が、その叫びから目を逸らす。

 そして、儀式の時間が迫り来る。儀式は村の皆で見守れる様、神楽殿の上で行われる。然し乍ら此れも亦、建前である。見守る等と言っては居るが、其れは監視の意である。

供物、其れ即ち贄を意味する。其れが逃げぬ様に監視をするのだ。若し、逃げようものなら。嗚呼、恐ろしや。この村の神は邪神だ。天上天下唯我独尊、この言葉が良く似合う。もう直、時間の様だ。村の皆に見られ供物が捧げられる、筈だったのだが贄が違う。入れ替わったのだ。嗚呼、神が御怒りだ。掟として、神に幾度か供物を見せる事になっている。そして神は、今回の贄を偉く気に入っていた様だった。故に御気に入りを取られて怒ったのだろう。

皆は村へと逃げて行く。そんな事をしても、見逃される筈がなかろうに。村へと逃げた事により、村が炎に包まれ灰燼に帰す。唯一残ったのは、神が住処として居た社のみ


嗚呼、「人は愚かで美しい」

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