『新型凍結保存器 かっちんこ』

やましん(テンパー)

『新型凍結保存器 かっちんこ』


 これは、あくまでフィクションです。多少、倫理的に問題があるので、ご注意ください。



        🍖



 テレビ通販コメンテーター


 『はひはひひ。今日の目玉商品は、これ。いま、超人気の、『凍結保存装置かっちんこ』。こいつは、退職して、ひたすら食べて、だらだらしかしないようなだんなさんに、大切な跡取りたちの邪魔にならないように、しかも長持ちしてもらう、画期的な装置です。もちろん、奥さんにも使えます。』



 画面の下に表示


 《国民健康省承認番号。2055Δ…00055》


 『しかも、こんなに小さい、こいつを、寝ているだんなさんのおへそに置き(まっちょな、もでるさん登場。にこっとして、ストレッチャーに横になる。)、さて、で、スイッチぽん。ほーらり、ほらり、ほらり、ほらほらよ。どんどん真空凍結睡眠状態に。サイズも、ほらね、5分の1に縮小するので、押し入れにもぽい。らくちん。食事も一切不要。これで、最大2年間保存可能です。』


 

 (コメンテーターさん、固まったモデルさんを押し入れにぽい。)



 さて、で、使いたくなったら、解凍は簡単。(押し入れから、つまみ出す。)凍結と同じように接続し、解凍ボタンをぽん。ほらり、ほらりほらほらよ。すぐ、甦ります。』


 (固まっていたモデルさんが、みごと、復活!)


 (立ち上がって、ボディービルダーのようなポーズを取る。)


 『国立大学の実験で、失敗する可能性は、0.0001パーセント以下と、確認されています。』


 (また、小さな字幕。『自己責任です。既往症のあるかたは、事前に資格のある医師の検査が必要です。』)


 『ほら、これで、元通りになりました。気分は?』



 モデルさん


 『最高だね。すごく、リフレッシュした気分だよ。パワーもりもり。』(そりゃ、最初から、もりもりしてる。)



 コメンテーター


 『そう、凍結すると、気分がリフレッシュされるという、信頼すべき報告があるんです。凍結中も、体力や身体機能は、ほぼ、維持されます。大食糧危機の救世主。かっちんこ。』



 (また、見えないくらいの、小さな表示が、一瞬、出た。『リフレッシュ効果や、体力維持効果には、個人差があります。多少の体力低下はあり得ます。』)



 コメンテーター


 『で、問題のお値段です。定価は、125000ドリムのところ。特別価格、なんと100000ドリム❗』



  ピンポーン❗


 『ちょっとお待ちください。このコマーシャル終了30分以内にご注文の方は、なんと、75000ドリムでの、ご提供にいたします。今がチャンス。』



 アナウンス


 『ご注文は、いますぐ、電話は、こちら。    ZYYK1052⚪⚪。ZYYK1052⚪⚪………ZYYKトウケツ⚪⚪、ZYYKトウケツ⚪⚪、まで。お掛け間違いのないように願います。』


 また、下の表示


 (ただいま、お電話、殺到中です。)



    ・・・・・・・・・・・



 ニュースキャスター


 『真空凍結すると、解凍時、様々なトラブルが発生しているとされる、凍結保存装置かっちんこ。間引きが頻発している社会に、かなり急速に普及しているとされます。このほど、われわれは、その内情を探りました。』



 ニュースアナウンス


 『かっちんこで、凍結解凍後、性格の凶暴化や、変質、幼児化、天才化、不可思議な能力の発現等、様々な後遺症が発現しているといいます。実際の例を、いくつか訪ねてみることにしました。こちらは、火星居住の、ツヴァイシュタインたえこさん。夫は、公務員でしたが、退職後、なにもやることも、意欲も、なくなり、ただ、無為に過ごしていたと言います。』


 庭の、空中を、風呂敷らしきを首に巻いて、ぐるぐる飛び回る夫が登場。


 『凍結保存し、一年後に解凍したところ、居住地の空を、こうして、ひたすら、飛ぶようになったと言います。』



      以下、略



 『政府は、現在調査中として、取材に応じていません。開発者は、政府機関との関係が噂されていました。』


 

 開発者 ラスティさん


 『開発には、なんの、問題もありません。政府、関係ないですね。わらしは、独自に開発さしました。もちろん、先駆的な理論はすでに、ありましたね。』



 ニュースキャスター


 『しかし、こうして調べると、この背後には、大幅な食糧不足が、背景にあることは、間違いないと思われます。解説員の間引さんに聞きます。これは、やはり、政府の意図が働いているのでしょうか。』


 『はい。政府は、否定していますが、政府の意向を受けた、『食糧不足対策開発事業団』の存在が、ここにきて、浮かび上がってきました。ほとんど、目につかない、地味な研究機関です。ラスティさんも、この機関との一定の関係は認めています。雇用ではなく、請け負いアドバイザーであると説明しました。しかし、この機関は、情報保安庁の管理下にあることが、分かってきました。情報保安庁は、我が国の、KGBとも言われる、かなり謎のある組織です。第三次世界プレ大戦を受けて、設置されましたが、長官や、一部の幹部以外の職員は、公開されていません。この『かっちんこ』には、単に食糧対策以上の隠された意図があった、と、専門家筋では言われ出しているのです。』


 ニュースキャスター


 『なるほど。どこまで、この先に、切り込めるでしょうか。』



 解説員間引さん


 『まだ、未知数です。我々も、取材の妨害を受けました。かつては、なかったことで、困惑しています。現在、取材適正化法案が審議されていますが、憲法改正後も、ちょっと減りましたが、引き続き、賛成派が庶民院の過半数を遥かに越えておりまして、さらに与党単独でも、可決されるのは決定的です。野党反対派は、抵抗する構えですが、政府は、議員を拘束することが可能な別の法案を今国会に提出予定です。主要各国が、保守独裁化するなか、我が国政府は、どこに行くのか、注目されます。』



 数日後、この報道に関係した人は、みな、辺境小惑星あたりに、左遷されたらしい。


 生き残れるか、かなり、怪しいとされる。


 しかし、あのコマーシャルは、しばらくは、快調に続いていたが、ある日突如、停止され、『かっちんこ』も、買えなくなった。


 アフターサービスは、一年だけ続いた。


 死者が出たことが、その、契機となったらしい。


 しかし、政府は、さらに大掛かりな制度を用意していたのだ。


 『国民半分かっちんこ』政策である。


 正式名称は、『世界的食糧危機を踏破するための特別対策に関する法律』である。


 絵江符日本連邦大統領の、肝いりらしいとされる。



        🥫 


 


 

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『新型凍結保存器 かっちんこ』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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