君馴染タンジェントアーク
伊藤キース
1, プロローグ
開演の時間になると、途端に辺りが真っ暗になった。
僕は怖くてエリカちゃんの手を強く握る。
『コウちゃん大丈夫よ、今から始まるのはとっても素敵なことだから』
「エリカちゃん……」
エリカちゃんに強引に連れてこられた、とある舞台。
僕たちは入場のチケットを持っていなくて、特別に端っこの席で見させてもらえることになった。
舞台が始まると、そこには今まで知らなかった世界が広がっていた。
美しい衣装を身に纏った、美しい演者さんによる、美しいお話。
そのすべてが僕にとって初めてのことで、僕は完全に心を奪われた。
ふと隣を見ると、エリカちゃんも僕と同じように目を輝かせていた。
これはきっと、僕たち2人だけの特別な思い出。
『コウちゃん、あたし決めたわ』
『将来女優になる!』
ーーーそれから、僕はエリカちゃんの姿をあの日見た主演の女優さんの姿と重ねていた。
それで僕は少しでも彼女の力になりたいと思ったんだ。
「エリカちゃん、これ、プレゼント!」
「最近お家の近くにできたアクセサリー屋さんで買ったんだ!」
『ありがとうコウちゃん!』
『わぁ!素敵!』
『どう?似合ってるかしら?』
「とっても似合ってるよ!」
『ふふっ、ありがと!』
ーーー
『コウちゃん、あたしね夢があるの』
「ゆめ?」
『あたし、将来とっても有名な女優さんになる!』
『いっぱい"しーえむ"とかにも出て、とっても有名な大女優になるの!』
『コウちゃんも応援してくれる?』
「う、うん…」
「でも、エリカちゃんが大女優になったら、僕ともう遊んでくれないんでしょ」
「そんなのやだよぉ~」
『もう、コウちゃんの泣き虫!』
『大丈夫よ!空はずっと繋がってるの!」
『どんなに離れていても太陽があたしとコウちゃんを照らしてくれてる』
「でも、くもりの日はどうするの?太陽なんて見えないよ」
『本当にコウちゃんは心配性なんだから!』
『大丈夫よ!』
『…だって、』
『 あたしがコウちゃんの太陽になるから! 』
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