4

 *


 パパは大きなくじらのように波にのる。


 大きくターンししぶきをちらす。

 海いっぱいを使ってドライビングしエアを決める。


 ヒトには聴こえない声で鳴く。


 海に身体すべてをあずけて歌う。海と、ユリさんにだけ聴こえている。


 そうやってヒトを…自らを傷つけるものを波にぶつけてくだいて洗ってゆく。


 いつか、多々戸の海とおなじ、発泡するソーダ水色の宝石みたいな優しさだけが、残るんだろう。


 それまでユリさんはこうやって、護岸に座って、パパを、見つめているんだろう。


 「パパは世界一の波乗りなの、スタイルがイカすでしょ?」


 て、目をハートにしながら。


 それでいいだろう?

 どんなチビも、よりよく生きる権利がある。


 だれかに愛される、権利が。


 「な、雪」

 「あぁ♬」

 愉快そうにバンザイして、雪はまた海岸にポッキーをばらまいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る