3



 「は…なにあれ…」


 思考が固まる。脚がすくむ。


 サーファーを弾き飛ばし呑み込んでゆく、動画で見たワイメアの波が脳内再生されて身がすくむ。


 『死ぬから』


 見上げるあの波を食らったら、たしかに死ぬ、たぶん死ぬ。


 いやいやむりだろ、オレが死んだら雪は、


 「越えられる波は、越えないとまえにすすまない。あれは、大丈夫」

 ヤンくんが爽やかに歯を見せる。

 「ダックダイブでいく」


 だ?


 「波が目のまえにきたらボードを離して思いきり波の下に潜る」

 頷く。

 「タイミング間違えると死ぬから気をつけて」

 目を剥く。サーファー安易に死にすぎだろ。

 「波が過ぎたらリーシュを辿って明るい方へでる」

 とりあえず、頷く。


 「きたっ」


 頭上から、大きくほれ上がって波が崩れ落ちてくる。

 水の塊が。


 大きく息を吸う。

 ボードを離して反動をつけ、足から思いきり波の下に沈む。


 ザザザザザザッ

 ゴボボボボボッ


 轟音とともに水の塊が頭の上を過ぎてゆく。


 目を開ける。






 あぁ、






 ひかりが、あふれる。






 目のまえに広がる光景に見惚れる。


 あふれるひかりの泡のあいまから、空の青が見え隠れする。


 そこには、発泡するひかりであふれていて、


 オレは、パチパチと発泡するひかりの泡に、包まれていた。


 『麻薬だ』


 そうだ、波乗りはたしかに麻薬だ。


 海に呑まれたがさいご、きっと、抜けだせない。




 「フッフー!」

 海面に顔をだすと、ヤンくんが愉快そうにシャカを向けてきた。


 オレもつられて、はじめて見よう見まねのシャカ…Loveとpeace…でこたえた。

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