カイト

1

 「え、なに、」

 「カレー、食いにきた」

 「え、なに?」

 「カレー」


 暗くて、表情はわからない。


 ぶっきらぼうで、お呼ばれしました、なんて声色じゃぁまったくない。


 海風に、アフロなり損ないみたいな下手くそパーマが揺れて中途半端に柄が悪い。


 「カレーとかだれに聞いたんだよ」

 「…カレーのにおいがした」

 「…、よんでねぇけど」

 「これ、平井さんのカミさんから、」

 「あ? あ、ちょ!」


 つきだされた紙袋に気を取られた隙に、

 「ユキちゃんっ、ユキちゃんっ、」

 勝手に上がりやがった。

 「ぶぶぶぶぅゔゔゔっ!」

 「ユキちゃんユキちゃんユキちゃん!」

 で、警戒心丸だしの雪を追いかけまわしている。


 やっぱりサーファー、どっかおかしいだろ。


 「あ、オレ、」

 きちまったものは仕方ない。

 皿にカレーを流し込んでいると、洗面台からカイトが顔をだした。


 「あ?」

 「先に風呂入りたい」


 え、ふざけてんの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る