星の王子様

1

 波を見つめる。


 波が彫れる。


 認めてパパが大きくボードを返す。

 テイルを思いきり沈めてその跳ね返りで波の斜面にのる。


 二、三回、大きく海をかく。


 身体の大きさなんか感じさせない。

 スローモーションみたいにボーにのる。


 波をなでるように。

 波の壁を滑走する。


 リップからショルダーを走り、

 ゆったりとボトムに降りてまたショルダーへ。


 たまに気が向いたように、ボトムから一気にリップへ躍りでて大きく弧を描き、スプレーをあげてターンする。




 優雅だ。




 波の上で遊ぶ。

 海の上で。


 少し、笑っているのかもしれない。


 けれどいつも表情のないパパの顔はやっぱり波の上でも感情がなくて、強いていえば、いつもはひき結んでいる口がわずかに開いているくらいだ。


 『包丁をもつと、人を刺しちゃうの』


 ワルイオトナ、なのは、たしかだろう。


 だけどそんなふうに怒りを表にだすようには、そのライティングスタイルからはまったく想像できなかった。




 それは、そうだ。


 冷たく燃える火がある、とゆうことをオレはまだそのとき知らなかった。

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