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 「じゃぁ、あしたはゆっくりねていてね」


 残ったものをお弁当にまでしてくれて、ユリさんとパパが二軒隣のアパートに帰ってゆく。


 「みんな、雪が大好きだ」


 それを見送って戸締まりすると、オレもご満悦に雪を抱えて空の部屋へ上がった。


 「オレも、」


 空が広がる。

 キッチュな、バカみたいに青く広がる空が。


 雪をねかせてオレもとなりに潜りこむ。ぷくぷくの頬にかかるふわふわの前髪をどかしてやる。


 「オレも、雪が大好きだ」


 オレはきっとこの小さな弟のために、さきに生まれて、いままで生きてきた。


 いままでのクソないまいにちが、なにか報われた気がした。

 ただ腹違いの…血のつながりなんかないけどたぶん弟かもしれないガキひとり、現れたくらいで。


 「単純だ、オレ、はは」


 人生は素晴らしくなんかない。


 けどきっと、


 これから素晴らしくなる。

 素晴らしくしなきゃいけない。

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