夏の日の落し物

佐々木 煤

三題噺 『真っ赤な鳥居の下』『ネックレス』『欺く』

カナカナとひぐらしが寂しげに鳴いている。森の木々がひぐらしに反応するようにザワザワと揺れる。日は落ちかけて辺りは薄暗くなり始めていた。僕と幼なじみの響子ちゃんは近所の神社に居た。生まれた時からいつも一緒で、今日も川で遊んで帰るところだった。

「この神社ってね、恋の神様が祀られてるんだって。」

「ふーん」

「けんちゃんはさ、私が東京に行っても、忘れないでいてくれる?」

夏の終わりに響子は東京へ引っ越してしまう。響子は村で1番可愛いし頭もいい。きっと東京へ行ったら友達が沢山できて僕の方が忘れられてしまうだろう。

「忘れないよ、僕の最高の友達だもん」

心では腐しながらも笑顔で答えた。

「じゃあさ」

響子は真っ赤な鳥居の下で歩みを止めて僕を見る。

「これ、友達の証として持ってて」

小さな青いガラス玉がついたネックレスを差し出していた。

「ありがとう。響子のこと絶対に忘れない」

ネックレスを受け取ってポケットにしまう。帰ったらなくさないよう、引き出しの中に仕舞っておこう。僕らは今の時間が早く過ぎてしまわないよう、ゆっくりと歩いて帰った。

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夏の日の落し物 佐々木 煤 @sususasa15

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