なぜかついてくる犬
仲仁へび(旧:離久)
第1話
小学校から家に帰るために通学路を歩いていたら、一匹の犬がなぜかついてきた。
柴犬だ。
小さい。
野良犬なのかな。
首輪が付いていない。
犬は、何が楽しいのか分からないけれど、こちらになついているようだった。
へっへっへ。
と、舌を出しながら、足どり軽く歩いている。
どうしてついてくるんだろう。
疑問に思ったけれど、犬に問いかけても、その答えが分かるわけじゃない。
犬は喋れないんだから。
私は犬を無視して、家へ帰る事にした。
玄関までたどりついて、後ろを振り返ると、まだ犬はついてきていた。
「おうちにいれる事はできないの。ごめんね」
犬は首をかしげた後「くうん」と鳴いた。
きっとよく意味が分かっていないのだろう。
私は無視して家の中に入った。
次の日。
学校から帰ってくるとき、またその犬はついてきていた。
通学路の途中から近寄ってきた犬は、楽しそうについてくる。
私は犬の方をじっと見つめてみた。
しかし、犬は何も分かっていない様子だった。
こうして見つめてみたって会話できるようになるわけではない。
私はあきらめて、その犬を無視しながら歩く。
途中で歩道に近づきすぎた車が、私の横を通る時、犬が「わんわん」と吠えて教えてくれた。
ちょっとだけ助かったので「ありがとう」と言ってしまった。
犬はとても嬉しそうに尻尾を振った。
情がわきそうだった。
でも飼えないのにつれていく事は無責任。
だから無視して歩き続けて、家についた。
家について家族に犬の事を言おうと思ったけど、やめておいた。
よけいな事は言わない方がいい。
この家に犬の事は必要ないのだから。
一週間。
はじめて見た日から、ずっと犬はついてくる。
どうしてそんなに私についてくるのだろう。
犬を見つめるとその犬が首をかしげるが、私の方が首をかしげたくなる。
その日も、その犬を無視して家に帰るけれど。
家の人達が機嫌が悪かったみたい。
私は彼等のストレスのはけ口にされた。
箒とか本とかで、何度も叩かれた。
椅子とかでも叩かれそうになった。
戸棚がたおれてきて、中から大きな骨が出てきた。
本物のほねじゃない。
犬が噛むやつ、ペットショップで売られているやつだ。
赤ん坊の頃に、犬の道具は全部捨てたって聞いたけど、まだ残ってるやつがあったんだ。
私は戸棚の下から、はい出そうとする。
けれど、そこを殴られる。
しかし、その瞬間、どこから入って来たのか分からないあの犬が、とびかかった。
そして、私を守るようにしてぐるると、うなって威嚇する。
家の人達はどうして犬がこの家にいるの、と怒鳴った。
私が赤ちゃんの時に、自分達が虐げて死なせた犬の事を思い出したらしい。
怒り狂うその人達だけど、その怒りは私には向かなかった。
犬が思いっきり腕を噛んで、出血させたからだ。
赤くしていた顔を青くした人達は、すぐに家を出て病院へ向かった。
すると、事態を心配していた近所の人達が部屋に入って来た。
そこで、この家の事が全てが明らかになった。
私は、後日別の場所に住む事になった。
あの犬の姿はそれきり見ていない。
もしかしたら、前に飼っていた犬の生まれ変わりなのかも、と思ったが真相は分からない。
なぜかついてくる犬 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます