毒使いの俺。高貴なる勇者のパーティには相応しくないと追放されたが、重労働だったので清々する。これからは自分のために生きようと歩き出したのだが……早くも戻って来いと言われているが無視しています。

ハクビシン

第1話 毒使いの俺。追放される。

「やっと来たか、ウスノロ」


 木製のテーブルに足をクロスさせ、深々と上品そうな椅子に腰掛けるのは、一応パーティリーダーのライノ・マクギリス。

 すらりと長い手足と高い身長。甘いマスクに金髪碧眼で金持ち貴族のお坊ちゃん。

 傲慢で常に人を見下し、自分はナンバーワンだと譲らない高いプライドを持ちながらも戦闘面はそこそこでイマイチカリスマもないのだが、パーティリーダーだからって理由で女の子にモテま――じゃなかった、性格が合わないので大嫌いな奴である。


「何の用事だよ。


 こうやって呼ばないとすぐに臍を曲げる。


「昨日、祝賀会の後。他のメンバーと話あったんだ。そろそろ足でまといをこの高貴なパーティからしようってね」

「なんだライノ。遂に自分が役立たずだって気づいたのか?」


 俺の言葉にライノは顔を真っ赤にしながら机を強く叩いた。

 大きな音でびびらせようってつもりなんだろうが、これならオークのおならのほうがよっぽど恐ろしい音がする。


「ってめえのことだよ! クロウ! このパーティから消えるのはよ」

「は?」


 思わず素で返事をしてしまった。


「クロウ。お前は確かにパーティではそこそこ目立っている……だが、目立っているからこそ、その悪役みたいな能力が気にいらねえ。勇者パーティに相応しくない!」


 完全に思念であることは分かりきっているので、ちょっと強気に言い返す。


「だからっていきなり追放できるのかよ。お前にそんな権限ないだろ。それとも俺がこのパーティに相応しくないって理由を俺が納得できるように今ここで説明してくれ……」


 突然、ライノが取り出した紙に俺は言葉を失った。

 

 ”クロス・ハーヴェストを反逆者として身柄を拘束する許可を与える”


 紙にはこの一文と、王様のものであろう印がしっかりと記されている。


「って訳だから……お前とはお別れだ」


 ライノの意味深な笑みに寒気を感じた俺は急いで部屋を飛び出そうと、ドアノブに手を掛ける。

 それと同時にドアが開き、甲冑姿の衛兵がぞろぞろと部屋に押し寄せ、あっと言う間に俺は衛兵たちに拘束されてしまった。


「まさか、勇者パーティの中に魔王軍と内通している者がおったとはな」


 衛兵の中から、聞きなれた声と共に姿を現したのは数年前に王都で俺たちを見送ってくれた大臣だ。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ。俺が内通者? そんなのはデタラメだ!」


 おそらく無意味だと思いながらも、大臣に向けて抗議の声を上げてみる。


「ふん、そんな言葉誰が信じるか。さっさとこいつを牢屋に連れて行け!」


 抵抗しても無駄だと思った俺は、おとなしく衛兵に連れられ町の地下牢に放り込まれた。

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