偽物の仲間だった

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 俺はそいつを指さして「偽物だ」と声を張り上げた。


 指をさされたそいつが緊張する。


 こいつは俺達の仲間じゃない。


 今までは感覚的におかしいと思っていたが、今確かにそう思った。


 俺達勇者パーティーはとある森の中を歩いていた。


 けれど、その森には物騒な噂があった。


 そこでは、人が一人消えて、代わりに偽物があらわれるという。


 だから警戒していたのだが。


 まんまとやられてしまったようだ。


「本物を返せ!」


 俺は偽物にそうどなりつける。


 すると偽物は首をかしげて「私が本物よ」と言ってきた。


 嘘だ。


 俺は騙されない。


 他の仲間は騙されても、俺だけは騙されない。


 俺の背後にいる仲間達は「何が変なのかよく分からない」という顔をして混乱している。


 無理もないか。俺とあいつは古い付き合いだが、他のメンバーはそうじゃない。


「偽物って、どうみたって本物じゃないか」

「そうよ、かわいそうよ。ひどい事言わないであげてよ」


 俺は仲間達の言葉に耳をかさずに、そいつに剣をつきつけた。


 すると相手は警戒するように、一歩さがった。


「他の誰が見間違えても、俺の目はごまかせない、正体をあらわさなければこのまま倒すぞ」


 逆に言えば、正体を現せば、見逃してやると言った。


 そしたら、目の前の仲間面していた何かは、体を淡く光らせた。


「ふふふ、どうして分かったの?」


 幽霊モンスターだ。


 半透明に人魂の形をしたモンスターは面白そうに問いかけてきた。


「お前に教える義理はない」

「つれないわね。本物はこの森の位置口に転がしてあるわよ、じゃあね」


 人魂モンスターはつまらなさそうな顔をしてその場から去っていった。


 言われた通り、森の入口へ戻ると気絶した仲間を回収する事ができた。


 すやすやと気持ちよさそうに眠っている。


 よくモンスターに襲われなかったものだ。


 そこで仲間達が感心したように問いかけてくる。


「やっぱり瓜二つだよ、どうして見分ける事が出来たんだ?」

「本当、偽物も本物のようにしか見えなかったのに、どうやって?」


 俺は本物の姿を指さして答える。


「普段のあいつはいつも、気を抜いている。俺が剣を向けても緊張したりはしないだろう」


 緊張感が死滅してるんだ。と言った。


 すると仲間は「ああなるほど」と納得した。


「つまり最初は、かまをかけていたのね」


 こんな危険な森の中で危機感もなく寝ていられるようなヤツ、他にいてたまるか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

偽物の仲間だった 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ