第3話 母の話

私の母は普通の明るい専業主婦だった。

そして何より主婦業が似合っていて、ある意味いつもキラキラしていた。


母は幼少期から手先が器用な事が自慢の子供だった。小学生でセーターを編んだり、折り紙や物作りに人一倍夢中になった。


そんな母は決して偏差値が高くはない高校を卒業するが、持ち前の器用さで服飾の短大に入学をする。母は物作りが好きで、その上、几帳面なところがあるので母が作った物の出来上がりはいつも美しかった。


そして母は、料理も美味しかった。

母の料理で美味しくないと思った日は1日もない程。学校から帰るといつも美味しいおやつを作ってくれていて、1日の出来事をおやつを食べながら話すのが習慣だった。


明るくて、おしゃべりで、母が笑うと家族が笑顔になった。その反面、母が怒るとリビングは一瞬にしてピリついた。


美的センスが良かった母は、リビングの飾り付けはいつも気を使っていて、季節の行事に合わせインテリアを変えたり、食事は食器や盛り付けもこだわりがすごかった。


ただ母は、1人で行動するのが苦手な人だった。

そして怖がりでもあった。

いい意味で言うと、すごく慎重であった。

長年ペーパードライバーで、買い物すら1人で行こうとはせず、父が休みの日に家族でスーパーに行くのが普通だった。


スーパーで大量に買い物をして、小分けにして冷蔵庫に入れる。それを1週間で割り振る。そんな毎日でも娘の私は毎日美味しいご飯が食べれておやつも食べれて、何一つ不自由がなかったのは母のマメさにあると思っている。


母の几帳面とマメさは、私の家での家計も充分に支えてくれたに違いない。父は良く働くがお金にももっぱら無頓着であったため、母がいつも家計の事を考え、貯金や節約、家計簿をつけてくれていたと思う。父は良い車に乗り、私は私立の高校に行かせてもらえたのだから、父と私は母には頭が上がらないのだ。


女の私からしても、完璧な母だった。


母はいつも言っていた。

「パパ(父)が私の事が大好きだから結婚してあげたの。」


そう。ユーモアもたっぷりな愛嬌のある母は一瞬にしてリビングを笑顔いっばいにするのだ。

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