事件file3 怪盗シャドウの殺人劇
怪盗シャドウの殺人劇 ①
某日、某博物館。
草木も眠る丑三つ時、警備員達は忙しなく動き回っていた。
トレンチコートを着た刑事が色々な所に命令をだし、夜だと言うのに騒がしい。
これではフクロウもろくに狩りが出来ないだろう。
その刑事は博物館の外であんぱんを食べながら1枚の小さな長方形の紙を見ていた。
その隣には博物館のオーナーと思われる小柄な男が丸い縁のメガネを上げる。
「刑事さん、いくら神出鬼没な怪盗でも、流石にあの厳重な警備なら、大丈夫でしょう」
「大体の人はそう言います。ですが彼をそう舐めてはいけません。奴は必ず現れ、あっという間に盗んでしまいます」
「んなアホな、あのダイヤの周りには360度全てを包囲する赤外線センサーと世界各国から呼び寄せた無敵の警備員、更にはダイヤの下に仕込まれた催涙ガス噴出装置。これだけあればどんな盗人も無理ですよ。ついでにガラスは手榴弾でも割れない強化ガラスです」
「……その警備を奴は」
その時、ガラスの割れる音が夜空に鳴り響き、警報が忙しなく鳴り響く。
「出たか!」
その時、煙幕が博物館内を包み込み、警備員達はその場に立ち尽くすしかできなかった。
警備員達にはテーザー銃を所持させているが、こんな煙幕の中では撃ちようがない。
煙幕が上がる頃には、ガラスケースの中野ダイヤモンドは綺麗に消えていた。
「くそっ! またやられた!」
「警部! 怪盗シャドウが上空を!」
「なにぃ!?」
月明かりに照らされた漆黒のマントにシルクハットの怪盗は、鮮やかに笑い、ダイヤを輝かせ、空を舞う。
「フハハハハ! 諸君、予告通りお宝は頂いだ。またお会いしましょう。グッドラック!」
「おのれぇ! 怪盗シャドウォ!!」
数日後、喫茶店サンライズ。
時代遅れのような店内で東間は漫画を読み、碧は前の事件の書類の報告書を書いていた。
北崎はコーヒーを入れて自分の味に酔いしれていた。
「うん、今日も美味しい」
「味でなんかわかるん?」
「今日は美味しいからいい日なんだよ」
すると、扉を勢いよく開けて、角刈りで無精髭を生やしたゴリラのようなトレンチコートの男が喫茶店に入り込んできた。
「ここが特殊捜査課かぁ!」
「「「はい!?」」」
3人は変な返事をしてしまった。
トレンチコートの男は1回落ち着き、緑茶を注文し、東間と碧の2人とデーブルを挟んだ。
「いやあすまんすまん、いきなり押しかけてな。私は怪盗シャドウ専門捜査の刑事、
「どうも、特殊捜査課兼日向署刑事課所属の南碧です」
「俺が特殊捜査課の客員の東間悠でーす」
「それであそこにいるマスターが、特殊捜査課課長の北崎巧さんです」
「それはどうも、早速なのだが捜査に協力して欲しい」
「その……怪盗シャドウとかいう胡散臭そうな盗賊を捕まえるの?」
「その通りだ東間君!」
東間はやや引いていた。
「その怪盗シャドウってなんですか?」
「怪盗シャドウ……奴は神出鬼没の大泥棒、予告状を送っては予告通りに物を盗む。そして物を盗むだけでなく、その持ち主が宝を不正に入手していた事などの汚職の件まで盗み、我々に送りつけるのが奴だ。まぁ世間で言う義賊って奴だ」
「うわー何その典型的な怪盗」
東間はそうぼやくと、砂糖を多めに入れたコーヒーをストローで吸い込む。
「私はその怪盗を追い続けて3年。もはや全ての手を尽くした。だが私は彼に……勝てなかった。だから! もはや君たちを頼るしか手段は無かったのだ!」
「「なんで?!」」
2人は口を揃えて言ってしまった。
すると、武は机を叩いて、2人の顔面に近づいて頼み始めた。
「頼む! 君たちの霊能力を使って! 怪盗シャドウを捕まえてくれ!」
「「……え?」」
2人はキョトンとして、東間は加えていたストローを落とした事に気づかない程思考停止していた。
「な、何をそんな知らない顔をしているんだ? 君達は霊能力を使って犯人を捕まえるのだろ?」
「全然違いますけど、むしろなんでそうだと思ったんすか」
「そうですよ、私達は特殊犯罪を捜査する人なんですよ?」
「……なん……だと」
東間は北崎の所に向かって武に聞こえないように話す。
「ちょっと北崎どうなってんの!? 俺たちオカルトクラブみたいなことになってるぞ!」
「まぁ、特殊捜査課なんて名前なら誤解されてもおかしくないよね」
「いやお前が周りの人に関わらないからこんな事なってんだろうが」
「まぁ僕はマイペースだから」
東間はため息をついて北崎に呆れた。
武は碧に質問をする。
「碧君、その特殊犯罪というのはなんなのかね?」
「まぁ、普通ではありえない犯罪……ですかね」
「なっ……被害者の霊を呼ぶとかは」
「ありません」
「喫茶店なのも、風水的な事なんじゃ」
「全く違います」
「コーヒーが美味しいのも豆の霊を降臨させているとかじゃ」
「武さん何をおっしゃってるんですか!?」
「全て嘘だと言うのか!?」
「嘘です! コーヒーが美味しい以外は!」
武はやや困惑しつつも、咳き込んで改めて2人に言う。
「……とにかく、怪盗シャドウを捕まえるには君達の力が必要だ、もう既に奴は次の獲物を決めている。すぐに捜査に協力してくれ!」
「……は、はい」
碧は内心、こんなゴリ押しで良いのかと心配になった。
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