第18話 花火大会の夜

私達の付き合いが始まり、数ヶ月が過ぎ―――――





ドーーーーン



 

       ドーーーーン





夜道を歩いていると、何処からか聞こえる花火の音。





「花火…」



私は花火の音を背に、夜道を帰って行く。






♪♪〜


『花火大会の日、浴衣で来て♪』



祐哉から、一通のメールが届く。




♪〜


『分かった』



♪♪〜


『ヤッター』




「クスクス…祐哉の喜んでいる顔が目に浮かぶな…」





そして、花火大会当日――――




待ち合わせ場所に向かっている途中の事だった。




♪♪♪♪♪〜


私の携帯に、祐哉から連絡が入ってきた。




「ごめん、ちょっと寄る所あるから先に行っててくんねーかな?終わったら、すぐ行くから」


「うん…分かった」



一瞬、不安になった。



「絶対に行くから!」

「うん…」

「友霞」

「何?」


「もし、花火が終わるまで来なかったとしても…絶対に待っていてほしい。でも、気をつけてほしい」


「祐哉…うん…分かった」


「友霞…美人だから目立っちゃうから、一分一秒、早く傍に行って隣に行きてーんだけど…とにかく待ってな!」



「うん…待ってる」






信じて待とう


そう思っていた





―――― でも ―――――





本当に来るのか?


疑っている自分もいた





初彼と行った花火大会


別れを告げられた




2人目


5年の付き合いの中


結局 別れを告げられた




3人目


元彼との復縁




―― でも ――――





現れなかった花火大会





そして今日


祐哉からの電話




正直


待ちぼうけくらうんじゃないか?


そんな事を思う中


待ち合わせ場所に


足を運ぶ









ピュ〜〜〜…






ドーーーーーン…





パラパラパラ……







一発目の花火がある。







「花火……始まった……」





♪♪〜



『祐哉、花火始まったよ』


『でも一緒にいるはずのあなたがいないんじゃ面白くも何もないよ』





♪〜


『綺麗な花火も綺麗じゃないって?』





「…祐哉…」





♪♪〜


『そうだよ』

『花火が終わるまで来れそう?』



♪〜


『大丈夫!間に合うから!一人で見てろ!』



♪♪〜


『なんか冷たくない?』

『まさか…他に女が…』

『そういう事か…』




♪〜


『いや違うから!』

『とにかく変な男につかまんな!ただでさえ、友霞は目立ってんだから』




しばらく、メールのやり取りをする。




そして――――



「かーのじょ、一人?」



3人の男の人が声をかけてくる。





《ヤバイ…絡まれたよ…どうしよう…》




「ごめんなさい!連れがいるので他当たって下さい!」


「何、いいじゃん!」




私の肩をグイッと掴まれた。




「可愛い〜♪」

「つーか、美人系?逆に大人の色気ありの浴衣姿?」

「ヤベー、マジ、そそるんだけど」

「や、やだ!離して下さい!」

「イイ香り」



私は、何とか押しのけ走り去る。




私は、電話を掛ける事にした。




「お願い祐哉、早く出て!」

「もしもし?友霞、ごめん!もう少し…」

「祐哉っ!絡まれたっ!」



言い終える前に言う。



「えっ…?」

「だからごめんっ!」



「はい、電話は辞め、辞め」



私の携帯を取り上げる。



「ちょっと…!返して!」



「彼氏?」

「そりゃそうでしょう?」


「これだけの美人なんだし!つーか、待ちぼうけ?彼女一人にさせるから」




そんな会話を3人がやり取りする中、ピッと切られ、携帯は暗闇の地面に投げ捨てられた。




✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕



「もしもし?友霞?友霞っ!?…マジかよ…」




✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕




「彼氏さんには申し訳ないけど、俺達の相手してくれない?」


「やることやってんだし」




彼等が、躙(にじ)り寄る中、私は後退りする。




「来ないでっ!!」




ガクッ ドサッ


私はバランスを崩し、転倒する。




「きゃあっ!……った〜…」






ピューーーーー





      ドーーーーン





                   ドーーーーン






「みんな花火に夢中だし、大声出しても誰も助けに来ないよ」



私は下駄を投げつける。





「痛っ!」

「何すんだよ!」




足早に逃げ隠れる場所を見つける。




「クソッ!こっちに逃げて行ったんだけどな!」

「逃げ足の早い女!」

「あ~あ…マジ残念!」

「行くぞ!」




3人が遠くに離れているのが分かった。




「………………………」



「…怖かった……」






ピューーーーー





        ドーーーーン






パラパラパラ……







花火の音だけが響き渡る。





花火を見に来たはずが


見ることが出来ない花火



見たくても見られない時間


恐怖だけが残っていた……


























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る