第16話 あなたの花火に・・・
『祐哉ゴメン…話があるの。連絡下さい』
ある日、祐哉にメールを送る。
♪♪♪〜
『メールアドレス不正』
ズキン…
メールアクセス不可能の文字が返ってきた。
「…祐哉…」
私は何度も何度も送る
次の日も
次の日も
でも……
結果は同じだった
もし連絡ついた所で
嫌な女でしかない
タチの悪い女に過ぎない
もちろん電話をかける方法もあったけど
勇気が出なかった
ショートメール?
その方法も脳裏に過ったけど
自分の中で彼を傷つけた感が凄く強く
迷惑は掛けたくなかった
ただでさえメールを送る時点で
嫌な女になっている自分が嫌になる
そして――――
結局 彼には
それ以上は出来なかった―――――
連絡がつくことも
届くこともなかった……
ある日の夜――――
「祐哉、お前、飲みすぎ!」
「平気だって!」
「ヤケ酒!気になるなら連絡すれば良いだろ?」
「出来るかよ…そんな事…つーか、もう良いし!」
✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕
「友霞!飲みすぎだよ!ヤケ酒は体に悪いよ!」
「…う…ん…分かってる…分かってるけど…飲まずにいられないよ……」
「…友霞…」
「…祐哉は…私の中で…いつの間にか…夜空にあがる大きい大きい大輪の華に変わってた……本当…馬鹿だよ…私……」
涙がこぼれる。
「…友霞…だったらどうして早目に行動を起こさなかったの?いつでもチャンスはあったんだよ!二人の関係は、既に動き始めてたんじゃないの?」
「………………」
「何度も再会するとか、何かあったら傍にいてくれたとかって…そう滅多にないよ。彼は、友霞が好きだったから色々としてくれた。好きな人だからこそ友霞の為を思って…当たり前になってたらチャンス逃すに決まってんじゃん!当たり前になる前に…自分の想い気付くべきだったんじゃない?」
「…………………」
「もし…また…二人が再会出来た時は素直になると良いよ。意地張らないで言えばいい。二人は見えない絆があるはずだから。きっと…大丈夫!彼も嫌いになったわけじゃないはずだから」
「…そうかな…?」
「私の知る限りでは本命中の本命で、めちゃくちゃ惚れてたと思うよ。マジ(本気)惚れしてたって!」
「……………」
「…ありがとう…あゆみ…付き合わせてゴメン…」
私達は別れ、フラつく体で街中を帰る。
♪……き〜み〜が〜いた夏は〜……そ〜ら〜に〜消えて〜った〜…♪
ふと、脳裏に過る、とあるアーティストのワンフレーズの楽曲。
誰もが一度は聞いた事あるだろう…?
♪…今すぐ会いたいよ〜その声を聞きたいよ~……♪
これもまた別のアーティストの曲だ。
今の私が望んでいる
心の想いが綴られている
夏だったり……
花火だったり……
私の中で
その印象が強い
「祐哉に…会いたい……」
二人の時間
過ごしたあの夏の日……
「きっと…祐哉の中では…私が綺麗に咲いていたんだろうな……」
♪…あなたの心が見てる夜空には…今…私が綺麗に咲いてますか…?…♪
私の脳裏に、また、別のアーティストのワンフレーズが流れる。
そして、ふと、店の外に投げ出されるように出ている花火に目が付く。
「冬なのに……花火……季節外れ……」
私は手に取る。
「あー、それ欲しいなら持って行って良いよ」
店の人が私に気付き言ってきた。
「えっ?」
「倉庫整理していたら出て来たんだよ。売れ残りなんだけどね」
「いくらですか?お金…」
「いやいや、いらないよ」
「でも…」
「大丈夫だよ。好きなだけ持って行きな。あ〜寒っ!今夜も冷えるな~」
そう言って店の中へと入って行った。
私は花火を持って帰る事にした。
しばらくして――――
「おいっ!祐哉っ!こっちだって!」
「あー…ゴメン、ゴメン」
ドキン
「祐哉…?」
まさかの偶然
こんな奇跡もあるもの?
私は、気付かれないよう身を隠す。
「なあ…花火ってさーー…不思議だよなーー…」
ドキン
声のする方に目を向けると、間違いなく祐哉だ。
「は、花火?って…おい!冬だぞ!冬!飲みすぎてお前の頭の中、夏に逆戻りでもしたか?」
「何でだよ!!つーか…季節外れの花火も綺麗なんだよ!知らねーだろ!」
「はいはい」
「…俺さ…好きな人の…花火になりたいって…そう思ってた……」
ドキン…
「おい…何だよ…その好きな人の花火になりたいって…詩人か?」
「いいから、とにかく聞けっ!線香花火でもなくて…ねずみ花火でも…ロケット花火でも何でもねーの。大空高く大っきく華のように広がる花火……」
「…祐哉…お前…」
「結局…俺は彼女の花火には、なれなかった…どうしてかなーー?俺、色気なかったのかな?まあ、所詮、21だし年の差気にしてたのかな…?」
「いくつ?」
「6」
「6っ!?普通に良くね?」
「だよな?」
「じゃあ…色気かもな」
「ええーーっ!!色気?…そうか…やっぱ…そうだよな…やっぱ恋している時、キラキラしてて輝いてっけど…相手に、その気ねーなら色気も輝きも、なんもねーよな?愛して愛されてが恋愛だもんな……あーーっ!チクショーーっ!イイ男になりてーーっ!」
「祐哉はっ!」
「うわっ!ビックリしたっ!!」と、友達の人。
「…友…霞…?」
「瑞梨 祐哉は!十分、イイ男だったよ!!」と、私
「………………」
「…ゴメン…えっと…」
「…友霞にとって…イイ男だったら……どうして花火になんなかったんだよ……」
「…それは…」
「結局…それまでの男だったって事だろっ!?」
歩み寄り私が持っている花火を手に取る。
「線香花火も繋げていけば、ハッピーエンドまでは繋げられた…何度もチャンスあったんじゃねーの?…でも…下に落ちて消えてなくなれば…繋げられる導火線も…1から…やり直し…」
花火を押し付けるように返す祐哉。
「もう俺の事は良いからさ、他に男つくっちゃえよ!新しい花火相手見つけて繋げて貰えば?あんた美人なんだし、すぐに現れるって」
「……………」
私は下にうつむく。
「行こうぜ。浩史」
「ああ…」
「…すっげー…マジ(本気)になった女…彼女にとって……俺は…結局…何の花火だったんだろうな…」
祐哉
あなたは私にとって
大きい花火だった………
そのことに気付かなかった自分が
とても腹立だしくて
悔しくて
仕方がなかった……
「…本当は…大きい花火だったんじゃ?」
「えっ?」
「一緒にいる事が当たり前だとしたら…きっと…彼女は失って気付いたのかもしれない」
「…そうだとしたら…チャンスはあるんだけどな…」
「えっ?」
「嫌いになったわけじゃねーから…少しでも気付いてくれたら……」
「…祐哉…」
「彼女…俺のバイト先で知り合っていた相手。一目惚れして、当時、その秘めた想い隠して別の女性(ひと)と付き合った。さっきの彼女には…その時は彼氏いたから…良く店に来ててさ……」
「…つまり…それって…長年の片思いの相手を要約、手に入れたって事か?」
「…ああ…それに…俺の勝手な考えだけど…恥ずかしい話…正直…運命めいたものも感じてた……」
「えっ…?」
「偶然の再会も何度も続くと、そう思うだろう?さっきも、再会するなんて滅多にねー、奇跡だろ?正直、まさか、再会するなんて思わなくて驚いてんだけど…」
「だったら…尚更…手放したらいけないと思うけど。男も女も失って気付く事あるじゃん。お互い、一番大切な相手(ひと)だったんだって思う時。離れて気付く想いとかあるし」
「………………」
「心残りっていう言い方もあれだけど…彼女は…きっと…もう気付いてると思う…」
「…そうだったら良いけど…」
「相手の出方次第だと俺は思うけど…多分、何かしらのアクション起こすんじゃないかな?」
俺は待ってみることにした
俺は忘れたくても忘れられない
次の恋なんて考えていないから
俺は……
彼女と……
綾瀬友霞という
一人の女性と
人生を歩みたい
そう願っていたのだから……
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