真夏の140字小説(文披31題)

雪菜冷

第1話 黄昏のドーナツ(黄昏)

朱に染まった太陽が地平線に消えると空に赤い帯ができる。丸い地球を覆う様を想像するとドーナツのようだ。「食べてみたい」「なら切ってみよう」彼は大真面目に手をチョキにして空に掲げる。バチン。切り取られる赤。口に入れるといちじくのように甘い。赤を失った空は一足早く夜の色に染まっていた。

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