菅野契短編集
菅野契
小説「3」
悲しい事実ではありますが、第三次世界大戦が勃発してはや半年です。
報道機関なども軒並み消滅しましたし、地上の大半が核ミサイルによって消滅しました。
シェルターに残された数少ない人類が我々・・・
統計などとりようがありませんが、おそらく人口の9割が消滅したでしょう。
唯一無傷だったのはマダガスカル・・・という情報も入っております。
情報というより、確度としてはほぼ噂・・・以外の域を出ませんが。
今回の世界戦争の覇者はいなかった。
そして、それぞれの核ミサイルが、それぞれの相手国を消滅させ、ドミノ式に暴力が暴力を生み、
まあこれが人類史の「終焉」に相応しいでしょう。
食料ももうありません。
私の家族は無事このシェルターに連れ込みました、
というより、本当に数分の判断で「間に合った」のです。
これも全て私のパラノイアな性格が幸いしたのでしょう。
放射能によって5m級のゴキブリが這いまわっているのを見ました。
生態系が異常な変化を遂げており、ほぼ我々の思いつくような動植物はおそらく絶滅したと思われますが、
昆虫だけはたくましく生きているのをみると、我々も結局は食物連鎖のカーストの「敗者」ということでしょうな。
シェルターの中の衛生はお世辞にもよいといえるものではありません。
水はありませんし、ほぼ半数は病気にかかっています。
この段階になって、不信仰だった私も神の存在に縋りつつある。
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デリメル大佐からの指令を受け、某国に核弾頭を打ち込んだことは確かです。
キューバ危機では当事者の果敢なボイコットにより冷戦の最悪のシナリオは避けられましたが、今回はダメだったようです。
やはり、世界平和とか、調和というのは「おままごと」だったのでしょう。
そして、何よりも衝撃的だったのは把握している以上に、数多くの中小国家が核弾頭を所有していたことです。
そしてN×Nの核ミサイルの応酬が重なり、地上から人類はほぼ絶滅しました。
私も、いさぎよく、自決するつもりです。
ああ、自決は日本のサムライの思想でしたね。
彼の国では、それは「名誉」のため・・・だとききますが、おそらくは「集団心理」が「個人の意思」を塗り替える強力な圧力でしょう。
「真面目」であるということはときに危険なことです。
「真面目」であることは、つまり「周りに合わせる」ことが行動基準の核になっているということは、
「ナチス」がお上になれば「ナチス」として「真面目」に機能するということだ、
そして私はこのスイッチを押した。
多くの女子供を火だるまにした。
私は、私が憎い。
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