第3話 笹塚芸術大学
目覚まし時計がけたたましく鳴る。
「もう朝か。」
と目覚まし時計の頭を押さえ、起き上がる。
暑い夏の日の懐かしい夢だった。画家になりたいと思った時の絵だった。ゴッホのひまわり。
見た人を元気にさせる絵を描きたい。その夢を叶えるために笹塚芸術大学に入ったんだったなぁと昔の想い出に浸っているともう一度目覚まし時計が激しく鳴り響く。
二度寝防止のために鳴る2個目の時計のせいだった。
慌ててもう鳴らないようにボタンを押して飛び起きる。
ジーパンに白いストライプの入った青いティーシャツをいそいそと着る。
タイマーのおかげで炊き立てのご飯もできている。朝の5分は貴重だ。無駄のない動きを考えながら冷蔵庫を物色し卵、ベーコン、豆腐と油揚げをみつける。
「今日の朝食はこれだ。」
温かくなったフライパンに油をさっとしいてベーコンをのせて焼く。水に入れた豆腐と油揚げを入れ温める。
そろそろ火が通ったかなーというところで卵を台所の角に軽くコンコンとぶつけてフライパンの上で2個割って目玉焼きに。
温まった豆腐と油揚げの中にちゃっちゃっと味噌をとかす。
「ダシまで準備するなんて自分に期待するだけ悲しいだけだしな。」
とちょっと母の味噌汁を思い出し、あの味はないが自由はあると正樹は自分に言い聞かせた。
目玉焼きの黄身が固まってしまう前にフライパンから火を離しお皿にのっけてお味噌汁も適当に完成。買ってきたままの漬物も机に並べて朝食の準備は終了!
「いただきまーす。」
と手を合わせムシャムシャと食べだす。
目玉焼きに箸をいれてトロトロの黄身がでてきたところに醤油をひとたらし。ベーコンと絡ませて白いご飯をいただく。
「うーん。うまい。」
一人でつぶやき、お味噌汁の豆腐と油揚げをすすりまたご飯。漬物を食べて口の中をリフレッシュ。そしてまたカリカリベーコンを食べつつご飯。
ベーコンエッグというものを考えた人に感謝するのであった。
軽い朝食を終え
「ごちそうさまでした。」
と食器を洗い水切りにいれて、カバンや画材を持ちいざ大学に。
◇
ドアを開けて外に出ると直射日光は眩しいが風が心地良い。木造アパートの前には一緒にひまわりが咲き乱れている。笹塚芸術大学は自然の中にあった。
学業や芸術に邁進してほしい。芸術は自然の中から学ぶものというのが学長の弁。のんびりした大学で本人の自主性を尊重する大学である。
学食を食べる場所も完備。リーズナブルな値段、学食の味もなかなか好評だった。また、近くにはコンビニや小さな飲食店がありちょっとしたものなら商店街にでるまでもない。
大学ができたばかりの頃は近くに寮はなく周辺の民家に頼んで学生を受け入れてもらった時もあった。
最初は躊躇していた街の人達も定期的にお金が入ってくる大家も良いものだと思いそれ以降、学生向けのアパートやマンションが大学近辺に建てられるようになった。
大型スーパーを筆頭にレジャー施設、食事処、居酒屋、洋服店等が数多くでき○○市は活性化した。
この街の歴史は笹塚芸術大学と共に歩んできたといっても差し支えない程だった。
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