吸血姫は『みるく』をご所望です!
一帆
第1話 牛乳は完全食品?
今日も、私の隣で、パック牛乳を飲んでいる
◇◇◇
「
「? なんで?」
「蒼下さんって、美味しそうですもの」
「?」
「あ、蒼下さんが作るスイーツのことですわ」
「霧里さんは牛乳が好きなの?」
「牛乳は飲む必要がありますの」
「身長でも伸ばしたいの?」
「身長を伸ばす? いいえ、違いますわ。牛乳は血の代わりに摂取しておりますの」
「血の代わりだなんて、……その言い方、ちょっとひくかも」
「そんなこと言わないでくださいませ。血は、わたくしたちにとってとても必要なものですわ」
「確かに、血がないと生き物は生きていけないけど。人間は全血液量の20%の出血で出血性ショック、約30%以上の出血で生命の危険があるっていうし、生物にとっては必要なものだったわ」
「そうでしょう? ですから、足りない分は、他から補わなければいけませんの」
「わかった、わかったわよ。そんなに身をのりだして力説しなくても……。ち、近すぎるって!」
「蒼下さんの瞳には、わたくしだけが映ればいいのです」
「と、と、とにかく、恥ずかしいから、ちょっと離れて! 」
「……ちぇっ」
「私に顔を近づけたり、舌打ちをしたりと、体育の時間に倒れたのに、元気そうじゃん。もう、大丈夫なの?」
「心配してくださりありがとうございます。諸悪の根源は陽の光ですわ。不意打ちのように差し込んできやがって…、あ、わたくしとしたことが、はしたないことを……ほほほ……」
「まあ、授業が始まってから、急に体育館から運動場に場所が変更になったしね」
「雲も厚く灰色だったから、外に出ても大丈夫だと思ったのです。……、それに、蒼下さんの体操服姿も判断を誤った原因ですわ」
「私の体操服姿が? なんで?」
「ぷりっと引き締まったふくらはぎ、真っ平かと思うような胸、髪を束ねたからこそ見える首すじ、腕や足から透けて見える血管…………、ハァ、思い出しただけでも、じゅる……、顔が赤くなりますわ……」
「霧里さん、さりげなく私のことディスっていない?」
「そんなことありませんわよ? 制服では目にすることのできない生命力のあるお姿を目にすることができるのですから、これほど嬉しいことはございませんわ」
「やっぱ、ディスってるじゃん」
「そんなことございませんわ。蒼下さんはもちもちしていて美味しそうです!」
「なに、それ。男子みたいなこと言っちゃって。そうそう、男子と言えば、倒れた霧里さんを誰が抱きかかえるか、揉めてたんだよ? あの、堅物メガネ委員長でさえ、口を覆いながら手をあげてたし。霧里さんの体操服姿がエロすぎたんじゃん?」
「……ハァ…、わたくしは、蒼下さんがよかったですわ」
「安心して。すぐに、木島先生が保健室から飛んできたから。木島先生って、霧里さん専任の保健の先生でしょ? 金持ちのすることは想像を超えてるって霧里さんを知らない生徒は陰口をたたいているけど、やっぱ、それだけ、病気が大変だってことなんでしょ? 木島先生が言っていたけど、霧里さん、日光がダメなんだって?」
「これでも、百……、コホン、あ、数年前よりは、陽の光に対して免疫ができましたのよ。これも、霧里牛乳の牛乳を飲んでいるからだと思いますの」
「牛乳には、カルシウム、たんぱく質、炭水化物、脂肪酸、ビタミンなんかがはいっていて、免疫効果も期待できるっていうからねー」
「そうなんです。牛乳の色は白いですが、血液と同じ成分がはいっておりますからね。色が一緒のトマトジュースとは大違いですわ」
「トマトジュース? ああ、まあ、トマトジュースは赤いから血を連想すると言われれば、そうかもしれないけど……」
「でも、トマトジュースでは、お肌の艶がなくなってしまいましたの。それに今以上に血が必要でしたし、いいことなんてあまりありませんでした。ほんとに、トマトジュースが血の代わりになるなんて、誰が言い出したのでしょう。ったく、色が似ていても、まったく違うものでしたわ。でも、霧里牛乳に出会ってからは、この通り、お肌もツヤツヤですわ」
「牛乳を飲むと、肌もツヤツヤになるの?」
「気になります?」
「まあね。これでも、女子高校生だからね」
「それでは、わたくしの飲んでいた牛乳をお飲みになられてはいかがです?」
「そんな、悪いわ。購買に行って買ってくるから大丈夫」
「購買に売っている牛乳は、味も薄く、成分調整牛乳ですわ。飲むなら、私が飲んでいる霧里牛乳がおススメです。霧里牛乳の牛乳は、普通の牛乳よりも濃くて甘いのですよ。牛乳が持つ乳臭さもなく、牧草の香りさえするのですよ? ささ、一口、お飲みになってくださいませ!」
「霧里さんって、霧里牛乳愛すごいよね?」
「当然ですわ。この霧里牛乳に出会えたことは、わたくし達にとって、奇跡ですもの」
「そういうなら、一口だけ…………コクン……」
「きゃー! 蒼下さん、お返し下さいませませ!」
「? なんで?」
「わたくしが飲んでいた牛乳のストローに、蒼下さんの唇が触れたのです!」
「はぁ?」
「至福ですわぁ。 …………コクン……。これで、蒼下さんと間接キスをしてしまいましたね! ムフフフ……」
「霧里さん、スケベなおじさんみたいな発言はやめようよ。恥ずかしいから!」
「蒼下さん、顔が真っ赤ですわよ。本当に、可愛らしいこと。食べてしまいたくなりますわ」
「もぉ!!」
◇◇◇
真っ赤になった私は、机の上にあったノートで、パタパタと顔を仰ぐしかできなかった。
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