06 - 逃げ場を失ったオレンジを助けてみた
話を終えて帰宅してから書類に目を通したがちょっと興味はあるけれど、行かなくてもここでなんとかなりそうだなって思って引き出しに入れてしまった。
翌日は出勤なので動きやすいといか僕はそんなに服を持っていないから仕事着で使っているパンツにシャツにベストを着る。ジャケットでも羽織ればスーツにもなるけれど、それは邪魔なので羽織らない。
流石にトレーナーにジーンズとかジャージはNGだって言われているからね。ああ、でもジャージでも特殊素材を使っていると許可される。僕の来ているパンツとベストも特殊素材で防御力が高いものだ。
「あーコンタクトないんだった…」
メガネと固定用のバンドだな、今日は。目はいい方だったが気付けば悪くなっていた。ここ2年くらいでメガネやコンタクトというものを使わないといけなくなってしまった。
村にいた時は狩りには目が大事だからか皆視力がよかった、当然僕も。でも勉強したりしていたら悪くなってしまったのはまあ仕方ない。
メガネをかけ、バンドを鞄の中身のチェックをしながらしまうと部屋を出る。
朝礼に間に合うように今日はゆっくりと職場に向かった。なんせ今日はキーラが休みだからだ。
職場に着くとチラホラと人が出てきていて、その中にはナージャもいた。まだルブルじゃないから休みのシフトが合わない時があるからね。
「おはよう、ナージャ」
「シャロン、おは!」
「今日はキーラ休みでしょう?」
「そうなんだよね…仕事一緒にして~」
「君が選んでくれるなら付いて行くよ」
「キーラの次だけれど私に合わせてちゃんと魔法練ってくれるから好きだわ」
「ふふ、それはそれはとても光栄ですよ、ナージャシャルフに認めてもらえて」
キーラといつルブルの儀式を受けるのかって話したのかな?後で聞いてみよう、朝礼が始まってしまった。
話も終わり各自自由時間とになる。巡回組のオズが当てられているのは恐らく一昨日の件で暫く本戦では戦わせてもらえないのだろう。それだけで済んだならむしろ軽いくらいだけれどね。
「シャロンはなんの仕事するの?」
「今日はキーラいないから読書もつまらないし」
「いっつも2人して真剣に勉強して一切話もしてないのに?」
「何か隣に居ないと寂しいじゃないか…互いに聞き合う事も出来ないし」
「そうだね、いっつもキーラもシャロンシャロンって言っているもんなぁ妬けちゃう」
「おお、妬くな妬くな」
「私は動物の調子見たりしないといけないからまた後でね、昼一緒に食べよ」
「うん」
ナージャを見送ってアイテム工房の方に行こうかなと歩き始める。
しかし、オレンジ髪は目立つなぁ…またクルミに絡まれているのを遠目に見て工房にこもった。サイレンが鳴ったのは工房に入ってから1時間半程してからだろうか。大まかには終わっていたので片付けて僕専用のロッカーに押し込んで、急いでガル塔に向かう。
「あ、シャロンいた!」
「ごめん、遅くなった!」
「行くよ!」
「はいよ!」
「ちょ、シャシャガル持ってくな!お前はエルンドーガルがいるだろう」
「今日は休みだし、先約済みなんですー!」
「そういうことー、他にも優秀なガルいるから大丈夫だよ」
そう言っていつも僕を選んでくれるシャルフ達の前を通り過ぎていく。ナージャとは何度も仕事をしている。勿論キーラが休みの時は僕が専属みたいなものだからね。
1位を争うんだよね、ナージャ組と唯一のルブル組が。それくらい息が合っているんだよ2人は。
「今日は何位いけるかな…」
「僕が本気出せば1位」
「今日はルブル組いるんだよな…2位か3位がいいな」
「調整は難しいんだけれどなぁ」
「冗談だよ、何位でもいい、頑張ろう!」
仕事も30分と軽いものだったのですぐに終わったし2位だった。ナージャは小柄な女性だけれど凄い強いんだ。戦闘民族じゃないのにこんなに強いってことは相当努力したんだと思う。
そのまま仕事もなかったので昼食を詰所の食堂で取っているとキーラが来た。たくさん買い物袋を持って。
「キーラ!」
「ナージャとシャロン2人だと寂しいかなって思ったのよ」
「寂しかったよキーラぁ」
「僕もだよ」
「これでシャロンもいなかったら孤独死してたかもしれない」
「僕もナージャいなかったら孤独死してたかも」
「ふふっ2人に死なれたら私も孤独死してしまうわ」
荷物を置いてプレートを持ってきたキーラも食事を始めた。
「ってか何をそんなに買い込んできたの?」
「ガルの必需品の買い物にお洋服、今度ナージャと出掛ける時に着ようと思って」
「お、じゃあその時が楽しみじゃないか、ナージャ」
「絶対、可愛い、確信」
まだ服見てないのにって笑うキーラ。本当にね。
昼食を終えてから薬作りに行くというキーラに付いて僕もナージャも作業室に入る。
「こっちのテーブル使っていい?」
「ええ、いいわよ」
「アイテム研究がね、なかなか進まないんだよ」
「ああ前に言っていた研究ね…」
「と、ロッカーに詰め込んできたんだった…取ってくる…ついでに飲み物何がいい?貰ってくるよ」
「紅茶がいいわ、いつもの」
「同じのがいい」
「了解」
ロッカーは近くにあるから先に飲み物を作ってもらいにガル塔に向かった。食堂でお姉さんにいつもの紅茶って頼んだら大きな水筒に作ってくれるというので待たせてもらう。
本を読もうかと思ったけれど他のガルに話しかけられたので対応している間に紅茶も出来たみたいだ。
「シャシャ君、ありがとう、またわからない所あったら教えて」
「僕でわかる事ならいいよ」
「今度は私のも一緒に考えてね」
「時間出来たらね、今新しいアイテム作成しているからそれ終わったらだなぁ」
「その時でいいわ、お願い」
ガルともそれなりに仲良くはやれていると思っている。女の世界だから僕とか男ガルは少ないし、仲良くしておかないと孤立したりするし。いや、まあいいんだけれど、仕事をする上では大切な事だとは思う、人間関係。
水筒とかを詰めてくれたバスケットを受け取った。
「何か入ってる」
「クッキー焼いていたから入れた、いらなかった?」
「え、めちゃくちゃ嬉しい」
「私はスコーン入れた」
「私は余っていたチョコおすそ分け」
「わぁありがとうございます、キーラもナージャも凄い喜ぶと思う」
食堂のお姉さん達ともしっかりと仲良くしている。こうやっておすそ分けしてくれたりおまけして貰えるのは嬉しいもんね。
ガル塔を出て研究所の方に向かっていると後ろに人の気配を感じて少し歩いてみるが、どうやら僕についてきているみたいだな…と立ち止まって振り返る。
「あれ、ウィゼルドだ、どうしたの?さっきから着いて来ていたでしょう?」
「あ、いや声をかけようにもボリューム調整が難しくてなかなかかけれないでいたんだ」
「…ぷはっ…もしかして、昨日の事気にしてかな?」
「ああ、驚かせてもいけないしと思って…」
「大丈夫だよ、多分。ビックリはするけれど、心臓止まったりはしないと思うよ」
「いや、すまない、尾行みたいになってしまって…気配は隠さないでいたから気付いてくれるんじゃとは思っていたが」
「うん、気付いてたけれど、まさかそんな理由で声かけられなかったなんて…ふふふ」
何だか面白い人だな。紳士的なんだか素直なんだかわかららないけれど。
「用でもあった?」
「いや、その…」
「またクルミから逃げる口実かな?」
「どうも好かれているのは正解みたいでな…困っているところなんだ」
「じゃあ作業室の方においでよ、キーラとナージャいるから他の部屋に移って作業してもいいし」
「邪魔じゃないか?」
「たくさんお菓子を頂いたからお茶だけでも付き合いな」
「ああ、ありがとう」
まあ荷物持ちにちょうど良かった。これ持ってとバスケットを渡すと、僕は自分のロッカーから荷物を取り出し、キーラが作業している部屋に戻る。
「ただいま、途中で荷物持ち見付けたから連れて来たんだけれど入れていい?」
「あら、バロンドシャルフ」
「バロンド…またクルミから逃げ回っているんだろ?」
「何、シャルフ塔でもやっているの?」
「あの子しつこいんだよ…見ていて可哀想なくらいに付きまとわれている」
「そりゃ、逃げたくなるね…一緒にお茶しよって誘ったんだ、いい?」
「いいわよ、ついでに手伝ってくれるとありがたいわ!力仕事あるから」
「うん、わかる」
「俺で手伝える事ならやりますよ」
荷物をテーブルに置いて、バスケットも置いてもらう。カップのセットも5つ入りだったし足りるな。とお茶の用意を済ませて作業台の空いているスペースにティータイムセットを用意する。
「まだ全然作業してないのにティータイムしよう」
「ふふ、そうね…あ、食後のまったりタイムしてないからそれってことで」
「食堂でお菓子も貰えたから食後のデザートってことで」
「いいな、食後のデザートか」
椅子を引いてきて4人で談笑しつつ食後のデザートという名の焼き菓子を頂く。
「ねえ、ルブルの儀式はいつにしたの?」
「まだ司令塔には話していないんだけれど来月頭にはと思っているんだ」
「ねえシャロン、貴方に見届けてもらいたいの」
「僕?いいの?」
「うん、私達の1番の理解者で、大切な親友だと思っているのよ、私は」
「シャロンだったら大歓迎だって私も思っていたんだ」
「光栄なことだ…」
結婚式みたいな式を行うわけでもないが、ルブルの儀式は特殊な道具を使い祝詞を唱える司祭がいて、見届け人はいたりいなかったりする。
「じゃあ2人には僕がルブルする時には絶対に参加してもらわないとな」
「ふふ、勿論いいけれど…貴方そんな気一切ないでしょう」
「バレてるね」
実際ルブルなんて結婚よりも重たい。紙面上の契約じゃなく血で繋がる契約だからね。
「ウィゼルドはルブルに興味あるの?」
「俺は…考えたことなかったな…強くなる事しか考えていなかったし」
「なら尚更ルブルは魅力的なんじゃないかしら?」
「相棒とのシンクロ率が上がれば能力も上がる、魔法の効果だってずっと高くなるじゃない…それは強くなることに繋がるもの」
「そう言われてみれば、そうだな」
まあウィゼルドが誰とルブル組もうが気にしないけれど、僕は誰かに一生縛られるみたいで嫌だな。だからルブル契約はしない。既に何件か断ってきたし。
「さてと、作業始めましょうか」
「そうだね」
お茶も飲み終えたし各々仕事を始めた。
彼女達のルブルの儀式が無事執り行われ無事ルブルとなり、ウィゼルドとクルミが来てから1ヶ月が過ぎた頃。新人のガルが入ってきた。他でガルをしていたというBランクのガルが2人。
「新しく入るレイア・ジベルトとエ・メル・ピピだ、エルンドー頼んだぞ」
「はい」
朝礼でも挨拶はあったけれどガル塔の前で2人を預けられたキーラ。まあ寮長だからね。
「ジベルトさんとピピさん、初めまして。私は寮長のキーラ・エルンドーです。敷地内の案内をするわね」
最初僕もキーラに案内してもらったんだよね。懐かしいなぁと思いながらその光景をナージャと一緒に眺めている。
「ああ、しっかり新人案内しているキーラ可愛いなぁ」
「凄いなぁとかじゃないんだ」
「だってもう、上から下までおはようからおやすみまでキーラずっと可愛い」
「ルブルになってから凄いノロケ始めたなとずっと思っているんだけれど…それはいつまで続く予定なのですか?」
「一生じゃないかな」
バカップル…。
このバカップル…仕事着、似たようなのを着ているんだよね。わざわざ自分たちで作ったんだって。まあ女性ルブル組には珍しくない事なんだけれどね。
キーラが一通り案内して回って来るのを待てされている状態のナージャと一緒に待っている。邪魔してはいけないからね。
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