外伝 血塗られた冒険の書

第1話

 -side

  殺戮さつりく令嬢アリシさん  LV200 


 わたくしの名前はアリシア、あのネタキャラで有名な悪役令嬢ですわ。


 でも、どうしてかしらね、血塗られた冒険の書では、わたくし、殺戮令嬢になっていますわ。


 少しヤりすぎたのかしら。


 そうそう、年に一度、このエタニティ王国では、大規模な軍事訓練がありますのよ


 ほら、見てくださる。


 王都より遠く離れた草原で、王国騎士団、すべての団員が集結していますわよ。


 ほんと、壮観ですわね。


 あら、わたくし、肝心なことを忘れていましたわ。


 わたくし、ここへ、ヤりに、いえ、見学しに参りましたの。


 招待をお受けになったお父様と参加されるお兄様と一緒にね。


 でも、残念ながら、わたくし、一人になってしまったの。


 ほんと、心細いわ。


 迷子ではないのよ。


 異国の地イザーク王国で強制売春させようとするお父様。


 わたくしを何度もレイプし続けるお兄様。


 いま、どちらにいらっしゃるのかというと、


『バリバリガツガツ!!』


 あら、たいへん、ベアードさんのお肉になっちゃったわ。


 ベアードさんは邪竜王っていう最強の召喚獣なのよ。


 今は残念ながら、黒いミニドラゴンでふくろうサイズなの、本当はもっと大きくてたくましいのだけど、大きくなると、目立っちゃうから、ごめんなさいね。


 それと……、生きているお父様たちをご紹介できなくてごめんなさいね。


 あら、いけない、もうすぐ訓練がはじまりますわ。


 急がないといけませんわよね。


「きゅるぅ!!」


 ベアードさんも新鮮なお肉を目の前にして、ご機嫌ですわね。


 今のわたくしは、どれだけヤれるのかしら。


 うふふ、ほんと、ヤりがいがありますわよね。


 伯爵令嬢だった、わたくしは、そうね、純粋だった。


 すっごく、可愛かったのよ。


 ヤられる前にヤルことが全てなのに、言葉だけで解決しようとしていたの。


 たしか、初めて殺されたときは……


★★★


 -side 伯爵令嬢アリシア LV1 


 王子に断罪されたあと……、牢屋の中で、兵士たちにドレスを剥ぎ取られ、裸にされた。


 わたくしは抵抗し暴れた。


 だけど、抵抗する度に、彼らは何度も、何度も、わたくしの頬をぶった。


 何度もぶたれるうちに身体が暴力で萎縮し、彼らに抵抗する意志すらなくなった。


 両手を縄で縛られ、言われるままに両手を壁につけた。


 兵士は胸を後ろから強く揉んでくる。


 そして、逃げられない様に体を固定され、


「麗しき伯爵令嬢さまが今や罪人か、俺たちを存分にたのしませろよ、まずは俺からだ」


「や、やめて……」


 兵士の反り立った大きなモノがわたくしに近づいてくる。


そして、わたくしは彼らに――


★★★


 -side 殺戮さつりく令嬢アリシア LV200 


 この結末以外にも、もっと酷い結末もあったわ。


 いつか、誰かがわたくしを助けてくれる。


 仲間になってくれる。


 何度も、何度も、冒険の書をロードしてヒトと言う悪魔を信じて頑張ったわ。


 最期は騎士団長の息子に首をはねられて、わたくしは、あきらめることにしたのよ。


 ヤラナければやられるんだと本当の意味で理解したのですわ。それからわたくしは変わった。そう、いまのわたくしは、あの頃とは違うのよ。


 うふふ、見つけましたわ。


「そこのあなた」


 武術に長けた者達、精鋭たちが集まる中、わたくしは、一人の兵士に声をかけた。


 だって、この方はね、


 わたくしの初めてを奪った悪魔だから。


「なぜ、このような場所に、あ、あなた様は、アリシア嬢?」


 彼は断罪された、わたくしを牢屋の中でとっても可愛がってくれた悪魔の一人、処刑されるまでの一か月間、食事を抜かれたりしたわたくしに濃厚でイカ臭い貴重なたんぱく質を身体の至る所まで注入してくれた、たいへんお世話になった兵士さんの一人よ。


「わたくし、イザーク王国にいる天使から贈り物を頂いたの、とっても嬉しくて、御覧いただけるかしら?」


 収納魔法で隠していた刃渡り15センチの包丁を取り出し、兵士に見せてあげた。


 魔法でコーティングされた刃こぼれ一つない、匠の一品ですのよ。切れ味抜群なんですから。


「はぁ、包丁ですか、なぜ、そのようなものを?」


「それはね」


「はぁ?」


「料理しようかと」


「料理ですか」


「素材は、もちろんロリコン野郎のあなた達、悪魔どもですわ」


 わたくしは包丁で兵士の首をはねた。


「え?」


 誰がこの言葉を発したのかすら、分からない。みんな惚けて、わたくしをみている。


 首のない兵士の死体から、血が噴水のようにふきだしている。


 それをうっとり見惚れている、包丁を持ったわたくしが立っていた。


 青のドレスが赤く染まっていく。


 あらあら、お気に入りでしたのに……


「さぁ、ヤってしまいましょうか、ねぇ、ベアードさん」


『バリバリガツガツ!!』


 わたくしは、もう伯爵令嬢じゃないの、『悪役令嬢』いえ、殺戮さつりく令嬢、だからこの国すべての悪魔を皆殺しにしてさしあげますわ。

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