悪役令嬢に転生した私はなんでもヤります。

眠れる森の猫

第1話 寝たキャラ豊富なアリシアさん

 -side 佐藤えりか-


 わたしが、この世界に転生したのは3歳の頃だった。すでに2年が経ってしまった。


「あと10年しかないよぉ」 


 死刑執行の日が着々と近づいてくる。今のわたしは5歳。大きな鏡を覗いてみると、


「てへ、アリシア5歳で~す♪」


 と、まぁ、鏡の中でピースしながら決め台詞をしている金髪碧眼の美幼女、それが私だ。ピンクのネグリジェも似合っていて、たいへん可愛らしい。うんうん。


「はぁ~、わたし、なにやってるんだろう。そうだ、いま何時かな?」


 いつかやってくる死刑に怯えるわたしは、時計が気になって仕方がない。このままメインルートにいくと、わたしの未来が、王子様に婚約破棄されて断罪、牢屋行き、そして兵士たちに犯されて拷問、さらには国民に石つぶて、最後は縛り首、ほんと、悲惨すぎる。時計をみると、時計はすでに0時を指していた。


 また1日が過ぎてしまった。


「……寝よっか」


 わたしはベッドの中に入る。でも眠れない。そんな、わたしは恐怖に震えながらベッドの中で熊のぬいぐるみをぎゅっと握りしめていた。熊のぬいぐるみの目は、そんな、わたしをじっとみていた。ただ、じっと見ていた。


 誰も助けてくれない。


 眠れない、眠ると、また夢を見てしまう。


 何人もの人達に犯されては殺される夢を……


 わたしは、この2年間、怯える毎日を送っていた。

 

 10年後、王家所有の舞踏会場で、王立学園の卒業パーティが行われる。そのパーティの最中に私は第二王子から婚約破棄を宣言されてしまい、いわれのない罪を断罪されて私は殺されてしまうのだ。


 なぜ、わたしがそれを知っているのか。私は前世の記憶を持っている。というより、前世の記憶しか今は持っていない。悲しいことに、この身体の持ち主だったアリシアの人格はすでに消失してなくなっている。生前、大学生だった私は悪役令嬢ものの小説を何冊か購入し読んでいた。私の姿を鏡でみて気づいた。のちに発禁になった小説のキャラクターだった。


 これは18歳以下に見せるなんて、とんでもない小説だからね。濡れ場シーンの連続、特に無理やり感が半端じゃない。ルートのシナリオ全てが凌辱、強姦の遭遇率が非常に高い、殺される以外、避けられることはない。必ず彼女の隣には男が寝ている、というか犯している野郎がいる。


『寝たキャラ豊富なアリシアさん』で有名な悪役令嬢だからね。それで、この世界が小説の世界だと気づいてしまった。でも私が、あのアリシアさんになるだなんて。


 伯爵令嬢アリシアは、美しい顔立ちをしており王国でも数少ない指折りの美少女。透き通るような白い肌に、すっきりとした目元、豊満な胸、スタイルもよく、レディとしてここまで洗練された者はいない。


 成長することができればだけどね。成長できないまま、殺されたり、奴隷にされたり、ロリコン野郎に犯されたりもする。


 IFルートもたくさんあって、かなり残虐な方法で殺されたり、美少女だけに、あんなことや、こんなこともされたりする。奴隷にされちゃうこともある。


 例をあげると切りがないけど、騎士団長の息子に首チョンされたり、国外追放後、ならず者たちに捕まって肉奴隷にされたり、あと娼館に売られたり、大魔導士の奴隷、大富豪のロリコンおっさんハーレムの一員にされたりで、あれもあったね、レイプ魔お兄様に媚薬づけにされて、飼われるENDも……


 もう、どのルートを進もうが、お先真っ暗なのよ。とりあえず、犯されるか殺されるしかない。


 10歳で婚約、結婚できてしまうロリコン野郎がたくさいる世界だから、もしバックベアードさんを召喚することができたら、こいつらを皆殺しにして、より良い世界にしてくれると思う。


 それに香水を作ったりお菓子を販売したり貴族相手に裏をかいたりなんて、にわか程度の知識でできるはずないじゃない。というか普通に無理じゃない? 


 天才発明家か天才パテシィエと呼ばれるほどの才能に運、政財界のエリート教育をうけたお嬢様じゃなきゃ、この最悪のENDを乗り越えられるはずないじゃない。それでも乗り越えられるかどうか……


 また死んでしまうのかな、もう痛いのはコリゴリ。飛行機に何らかのトラブルが起きて墜落し、わたしは苦しみながら焼け死んだ。もう私にできることと言ったら神様に祈ること、それぐらいの事しかできない。


 よし、今日も神様にお祈りをしよう。

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