第3話 シャベッタァ!幼年期のモグラ星人

今朝けさ、突然自宅前ガレージに巨大ロボットが配達された。かなり強引な置き配で、我が家は震度5強の震源地になった。吹っ飛ばされた俺の「脳に直接」言葉が響いてきた。「ご依頼のロボ配達完了しました」と(意訳)。

脳に直接!あの声!うっすら覚えてるぞ!今、なんとなく思い出した!

破壊されたガレージ周辺を見つめながら、俺の心は回想シーンへと移行する。


そう、あれは20年ほど前…


くそガキだった俺は友達と近隣パトロール中に、小動物を棒でつつきいじめるガキどもを発見した。特撮ヒーローにはまっていた当時の俺は正義のヒーローになりきっていた。「やめるんだ!」怪しい動きキメポーズでなだれ込む俺たちに恐怖したガキどもは逃げ散る。そして…そこで聞いた。「脳に直接」あの声が。

「ありがとう。お礼がしたい。望みを言え。」

シャベッタァ!

モグラみたいな小動物は宇宙生物を名乗り、地球調査中に「言語の通じない野生生物」に捕獲され困っていたむね、脳に直接送り込んできた。

協力への対価として返礼を云々うんぬんというガキには難しい概念を脳に送り込まれて、まあアレだ。銀河刑事ギルドにどうしても入会したかった当時の俺は即答でこう答えたさ。「銀河刑事…ヤマサンになりたい!」ってな。そしたらアレだ。俺の脳からヤマサンの搭乗メカの概要を直接読み取って「準備に少し時間がかかるが良いか」みたいなコト脳内に直接言われて、即答でOKしたさ。オモチャみたいな宇宙船に乗り込み帰っていくモグラみたいな宇宙小動物を見送って、俺はそれから毎日変身ポーズの練習にはげんださ。ヤマサンメカの配達の日を待ち望みながらな。


あれから20年。毎日の出来事に追われて、モグラ宇宙人の事も銀河刑事ギルドのことも巨大ロボの約束もとっくに忘れて日常を送っていた俺の、その平穏な日常を一瞬のうちに破壊したのは…あのときのロボ作成依頼!ってか当時のアホガキだった頃の俺!つか、あのときの宇宙人、本物だったんか!


なんで今頃届くのさ!ヤマサンロボ!

ガレージも、自家用車も、自宅も、全部踏みつぶしてさ!

通勤できないじゃん!今日の寝床も無いじゃん!

要らねーよこんなもん!どーすんだこんなもん。

もうアレだ。このロボで夜逃げするしかないか。

俺はいつのまにか左手に装着されたヤマサンブレスに向かって叫んだ。

「カモン!デカデカー!」

ヤマサン・コールに応えて、ヤマサン専用パトカー「デカデカー」が次元を超えて現れた。

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