第四十四話

 一カ月後。私は、平井に感謝していた。

「ありがとうございます、平井さん。おかげで『ゴールドスィーツ・シリーズ』の第三弾は、売り上げを伸ばしています」


 平井は、謙遜けんそんした。

「い、いえ。私は、何も……。今回は特に桐山君が、がんばってくれたんですよ」

「桐山君ですか……。まさか、ここまで成長するとは……。うーむ。これは来年、係長にしてみるのも面白いかもしれません」


 平井は、おどろいた。

「え? いくら何でも、早すぎるのでは?!」

「いえ。私のかんでは桐山君は、まだまだ伸びます。今のうちに、責任のある地位を経験させたいと思っています」

「そ、そうですか……」

「それと平井さん、あなたもです」

「え?」


 私は平井の目を見て、ゆっくりと告げた。

「最近は女性がどれだけ責任のある地位にいているかで、企業を判断する傾向けいこうがあります。平井さん、あなたは間違いなく仕事ができます。

 なので来年から桐山君が係長、そしてあなたに課長代理を務めていただきたいと考えています」


 平井は、引きまった表情で答えた。

「はい。がんばります!」




 同時刻、商品開発課。

 里美はもう、うんざりしていた。佐野が桐山から、『付き合って一カ月記念』としてもらった指輪を、朝から里美に見せびらかしていたからだ。ちなみに仕事は、全くしていなかった。


 里美は、ついにキレた。

「もう、佐野! いい加減に、仕事をしなさい!」


 佐野は、デレデレしながら返事をした。

「は~い」


 そして指輪を見つめて、うっとりしていた。

 里美は、思わずつぶやいた。

「ま、いいか。今日、一日くらい……」


 すると、もう一つの問題が、里美に泣きついてきた。

「えーん、里美ちゃーん! 佐野ちゃんに彼氏ができて全然、俺にかまってくれなくなったんだけどー?」


 里美は、仕方しかたなくなぐさめた。

「よしよし、神崎さん。でも神崎さんには、奥さんがいるじゃないですか? 優しい奥さんが」


 神崎は、決意した。

「ああー! そうだった! 俺にはカミさんがいたー! ようし! がんばって四人目の子供を作るぞー!」


 里美は、クギをすのも忘れなかった。

「仕事も、がんばってくださいね!」




 その日の夜。レモンティーを飲みながら、里美が告げた。

「あー。何だかんだで、色々な問題が解決した気がするー!」


 私も、同意した。

「ああ、そうだな。よし、ゆっくり休むとするか……」


 すると里美が、叫んだ。

「あ! もう一つ、問題が残ってた!」


 私は、驚いた。

「な、何だ?!」


 里美は、右こぶしをき上げた。

「子供をもう一人、作ることよ! よし! 今夜から、がんばるぞー!」


 私は、ちょっとれた。

「あ、ああ。そうだな……」




 完結



 この作品は、一応この第四十四話で完結ですが、自己都合により続きを書きました。興味がある方は、読んでみてください。


https://kakuyomu.jp/users/cbrate/news/16817330653632662148

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る