第3話 崩壊と旅立ち
気絶した俺が目を覚ましたのは見慣れた場所、生まれ育った我が家だった。しかしその家の雰囲気はいつものような温かさはなく殺伐とした雰囲気だった。
そして、そんな俺を見ている両親もいつもとは違う、父は鬼のような形相で俺を睨み、母は泣き疲れたのか窶れ、美人と言われてるその面影はなかった。
鋭く睨みながら父が口を開く。
「よりにもよってクリフ君に怪我を負わせおって、どれだけ彼のお父さんにこの店がお世話になってると思ってるんだ!!」
その言葉に気づかされた、二人が大事なのはお互いとこのお店だけ。
俺は単なる付属品であるということに。
俺は言わずにはいれなかった。
「なるほど、二人は生まれた子供より店の方が大事なんだな。はっきりわかったよ、お腹を痛めて産んだ子供はそこの棚に並んでいる商品と同じ道具。気持ち悪い価値観だ、そんな人間がいつも笑顔で笑ってるとか恐怖を覚えるね。でも残念だったな、一つ道具が使い物にならなくなって。早速今日にでももう一つの道具を作り始めた方がいいんじゃないか?」
俺の言葉に驚愕した二人だったか、すぐさま父は俺をにらみつけ
「アレウス貴様!なんてこと言うんだ!もうこの家から出ていけ!」
続けて母は虚ろな目で
「アレウスあなたは優しい子だと思っていたのに…あんたなんか生むんじゃなかった…」
と発言
この瞬間やはり俺に親はいなかったのだと思った。
実の息子よりその他大勢の話を鵜吞みにし否定し追い出す人間が親なわけない。
荷物をまとめ二人を見る
「俺も二人の子供に生まれなきゃよかったよ…」
そう吐き捨て家を出る。
背中からは再度泣き出した母親だった人の声が聞こえていた。
家を出た俺は行く当てもなくこの町をさまよう。
思い出すのは今回の事、考える度、考える度に自分の中にどす黒い感情が湧くのがわかる。身近な人でさえ俺を信じなかった。加えてあの時助けたはずの人間も俺の敵に回った。あんな奴助けなければよかった、そう思ったがすぐさまそれを否定する。あの行動は間違いではなかった、俺は俺の行動すべてを認める。
しかし、このまま彷徨っていても意味がないのはわかる、俺には住む場所も行く当てもない。死にたくなければすぐ行動に移るべきだ。考えろ考えろ、この行動が今後を大きく左右するのは必然だから。
早速この町を出ることにした。どうせすぐにでも噂が回るだろうからこの町にはいられない。
生活していくにはやっぱり冒険者になるのが一番無難かな。
冒険者は犯罪歴がない限り誰でもなれる、危険は伴うがある程度の生活も約束され、一攫千金なども夢じゃないため、この大陸では最も人気な職業である。
冒険者は基本冒険者ギルドで登録を行ったものが冒険者として活動できる。
冒険者ギルドは王国の本部と各町に設立された支部があり、どこでも登録ができる。
登録された情報は本部と各支部に渡るため、一度登録してしまえばこの大陸のどこの町でも依頼が受けられる仕組みになっている。
行くとしたら海沿いの都市ザスーラかな、バリロラより発展してるし。でも今の金じゃ、ザスーラまで行くことができないから、途中の町ガフトである程度生活ができるようになった方がいいか。
俺はそう考えガフトに向かう馬車に乗り込んだ。
バリロラからガフトまでは半日以上かかるためガフトについたのは翌朝だった。
アリウスはその足で冒険者ギルド、ガフト支部に向かう。
ギルド支部につき扉を開けるとそこは
依頼を探すためクエストボードを見ているもの、依頼を一緒に受けてくれる人を探しているもの、パーティーで話し合いをしているもの、武勇伝を語っているもの、など多くの冒険者で賑わい活気で溢れていた。
俺はすぐさま受付行く
すると受付担当の女性が笑顔でこちらへ話しかけてきた。
「どのようなご用件でしょうか?」
「冒険者登録したいんですが」
「登録の方ですね、そしたらこちらに必要事項を記入してください。」
そういわれた俺は必要事項を書き受付の女性に渡す。
「16歳ですか、お若いですね。学園には通っていないんですか?」
少し答えづらい質問に尻込みするがすぐに返答する
「通っていないです、両親いないんで」
別に間違ったことは言ってない。
それに、冒険者という職が増えている背景、依頼で両親を亡くしてしまう子供も少なくないため、別段珍しいというわけでもない。
「そうなんですね、浅慮な質問してしまい申し訳ありません。」
「いえ、気にしないでください。」
そう、気まずそうに言う受付嬢に少し後ろめたさがあるためフォローしておく。
その後、ギルドと依頼についての説明を受けた後、早速簡単な依頼を受けた。
依頼は冒険者ランク毎に受けれるものが違うため最底辺である俺は薬草集めくらいしか受けることができなかったが、ここから冒険者生活が始まると思うと心なしか胸が躍る思いだ。
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