第11話
しまったと思った。母方の祖父母の家は、私にとって、息抜きができる場所なのだから、行くことを禁じられると困る。迂闊なことを言ってはならない、慎重に言葉を選ばなくては、と私は思案した。
黙っている私に母は次々と質問する。
「誰から聞いたの?ひいおばあちゃん?」
「違うよ。ひいばあちゃんの頭の中は樫の木のことだけだよ。」
「おばあちゃんから?本当にいらないことを子供に聞かせるんだから……まさかと思うけど、おじいちゃん?」
「おばあちゃんから聞いたの。おじいちゃんと妹の令子おばさんは、小さい時、机の下で鰹節をかけたご飯を食べていたんだって。ひいばあちゃんは自分の子供に鰹節を食べさせてあげたいって思っても、周りの人が子供に贅沢させるなって言ったらしくて、それで机の下でこっそり食べさせていたんだって。おばあちゃん、結婚してから、おじいちゃんにその話を聞いてびっくりしたんだって。」
私は、できるだけ、さらりと言った。
母はため息をついた。しばらくしてから、
「びっくりしたでしょう。」
と言って私の顔をうかがった。
「まあね。昔の人は大変だったんだなあって思ったよ。」
私はあえて、「昔」と言う言葉を使った。
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