夜彼岸
土岐陽月
プロローグ
見渡す限りずっと、恐ろしく暗い空が広がっている。闇を照らす月光、その一切を厚い雲が消していた。自身の重さに耐えかねた雨粒が、その黒く染まった雲から絶え間なく降り注いでいる。傘など全く役に立たないほどだ。
あたりを満たすのは、慟哭にも似た雨音だけではない。足元で真っ黒の川が、巨大な生き物のようにのたうち回っている。その音もまた、執拗に鼓膜を揺らす。
誰かが石橋の欄干に手をかける。
刹那、大きさの起伏なく鳴っていた音が破られた。あたりを震わす轟音、それは橋の下から聞こえた。水面に何かがたたきつけられた音だ。
ほどなくして、何事もなかったかのように元の音が戻ってくる。
橋の上の人影が消えていた。
人が落ちたのだ。
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