5歳

『痛い』


頬をつまみ、ひねった。


母が結ってくれた髪を引っ張り、ほどいた。

あとは覚えていない。


彼らはもう忘れてしまっただろうか。

私はあなたたちの玩具になってあげてたんだよ。


抵抗はせず、笑っていた。


強がりの私は、泣かなかった。




何も考えなかった。










今、この状況を

まるで平穏な日常であるかのように、

そう、あの時の私は演じた。




私は、私の本心に、感情に、蓋をした。




わかっていたのだ。

それが負の感情であることを。



溢れないように、


強く、

強く、


押し込んだ。




『面倒なものだ。負の感情というものは。』




捨てた。あの時に捨てた。



心を捨てた。











終わりが来た。

彼らは私に謝罪をした。先生にバレたのだろう。


その後、私は彼らと何事もなかったかのように一緒に遊んだ。


そのまま卒園した。

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