サラリーマン川柳(お笑いネタにしてみました)

岩田へいきち

サラリーマン川柳(お笑いネタにしてみました)

「あんな、俺な、サラリーマン川柳、応募してんねん」


「ああ、あの大手の生命保険会社がやってるやつな」


「そんでな、昔はな、地区で佳作もらったり、優秀賞もらったりしてたん」


「ええっ、地区とは言え、優秀賞もらってたん? 凄いやん。そんな、なかなか優秀賞なんてもらえんで」


「いやな、たぶんな、応募者が10人くらいしかおらへんやったんやろ思うんや。保険のおばちゃんがな、『応募する人おらへんからなんぼでも書いて出してや』と頼むからな、4つ書いてな、おばちゃんに渡してやったんや。そしたらな、しばらくしてな、県の成績発表があってな、最優秀賞、優秀賞2つ、佳作1つ、みんな俺の作品なんや」


「ちょっと待て、それ、10人どころか、お前1人やったんちゃうか?」


「人口少ない県やからな、ないことないな。いや、作品は素晴らしかったんやで。どれも目の中に入れても痛くないほどの可愛らしさやったわ」


「ちょっと待て、川柳を目の中に入れる人がおるんか?」


「人口少ない県やからな」


「そっか…… まあ、あるかもな…… あるか」


「それでな、俺が言いたいことは、そんな人口が少ないとかいうことやないねん」


「じゃ、何が言いたいんやねん?」


「それからな、そのサラリーマン川柳大会、めちゃ人気になったんや。そしてな、県大会撤廃や」


「それ、大会なんか? まあ、確かにお前が上位独占するような大会意味ないな」


「いや、作品は素晴らしかったんやで」


「分かったて」


「そんでな、いきなり全国大会になったんや。最優秀賞取ったことある作者は、シードやな。のど自慢のグランドチャンピョン大会出場権を取ったようなもんや」


「いや、誰でも参加できるやろ。地区大会で賞とったとか関係なくするため撤廃されたんちゃうんか?」


「いや、人口少ない県やからな、シード権が必要なんや」


「いや、逆やろ、少なかったらなおさらシード要らんやろ」


「そやな。それでいきなり全国大会になったんや」


「それでどうなったんや?」


「応募したんや、毎年な。毎回、100傑、上位100番までが発表されるんやけど、入らへんねん。レベルもどんどん上がってるねん。毎年、差を広げられてる感じがするねん。県大会で最優秀賞から佳作まで総なめした俺が入らへんのおかしいやろ? 地域差別が入ってるんやないかと思うねん」


「地域差をなくす為に全国大会になったんちゃうんかい? そらないやろ」


「そやな。でもな、上位の作品見てたらな、ちゃうねん。みんな奥さんが太っただの、娘が口きいてくれないだの、家で邪魔者扱いされるだの、そんなんばっかりなんよ。ちゃうねん」


「どこがちゃうねん?」


「これはな、サラリーマン川柳やねん。奥さんが太ったとか、ゴロゴロ寝てるとか、娘がお父さん嫌いとかそんな家族ネタどうでもええねん。俺もな、昔はサラリーマンやっとったから分かるんやけどな、会社には、ぎょうさん悪い奴やズルい奴がいてんねん」


「例えばどんな奴がいるんや?」


「例えばな、例えばやで、ほんまもんの話とちゃうで。会議でな、意見求められるねん。アイディアを出せってな。

黙ってんねん、そいつな。誰かがいいアイディアを言い出すねん。そしたらな、そいつが一緒に喋り出すねん。最後にはな、最初からそいつが言っていたことになってんねん」


「そんな奴がおるんかいな。怖いところやな会社ってとこは」


「まあ、神業やな。お前は、経験ないから分からんやろけどな、そんなことがいつも渦巻いてんねん、会社ではな。みんな苦労してんねん。そんな苦労や辛さを吐きだすのがサラリーマン川柳だったはずなん。あんまり、腹立つからな、サラリーマン川柳でそいつのこと皮肉ったろうと思ったんやけどな、思いつかへんねん。5.7.5じゃ足りへんねん」


「そうか、それでそいつどうなったん?」


「出世しやがった」


「それでお前会社辞めて芸人やってんのかいな。難儀やな。それで、お前が地区大会で最優秀賞を取った作品って、どんなんやねん?」


『親よりも ネットに尋ねる 小学生』


「うん、時代を写しとるな。って、家族ネタやんか。もうええわ」


「ありがとうございました」


終わり


☆  ☆  ☆


お笑い芸人さん、連絡待ってま~す。

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