初来店
は〜い、いらっしゃいま〜――て、あれれぇ、ぽこさんじゃないですかぁ。
ひょえぇ、まさかわたしのために来てくれて……いやいや、自惚れはよくなぁい。
そうか、たまたまプラッと立ち寄ったらわたしのバイト先立ったというパターンで――ええッ、本当にわたしが誘ったから来てくれたていうんですかぁッ。ふへぇっ、こんな事てあるんだなぁ――と、わかってますって店長。すみません、お客様に立ち話なんて、さささっ、お席にご案内しま〜す。
は〜い、それではご注文が決まりましたら――ん、あぁ、このウェイトレスユニフォームですかぁ。へへへ、これはフリフリスカート全開のロリータファッションてやつなんですよぅ。まぁ、閑古鳥なこのお店の苦肉の策というかぁ、店長の性癖といい、と、睨まれちゃった。
いやですよぅ、なあんにもないないですからねぇ店長。うし、愛想オッケー。あぁ、すいませんぽこさん。ヒヒヒ、いやぁ似合ってないのはご承知の上なんですがぁ……ほへ、可愛い? 似合ってると申しますか、このわたくしめが? いやぁ、お世辞ウマいなぁ。ぽこさん、会う女の子みんなに言ってるタイプですね、さてはぁ。ほうほう、そんなことは無いって。ほほほ、その慌てぶりはこの小指の長さくらいには信じてあげましょうかぁ。
ふへへぇ、ちょっと〜っ、恥ずかしがっちゃって可愛いとこあるじゃないですかぁ、このお方。
あぁいえいえ、独り言ですよぅ、わたしのハートにボッチトークてやつですわ。
はいはい、それよりもご注文をどう――へ、もう注文は決まってると? はい、ではご注文を……お冷? おっと、お冷を出すのを忘れていま――え、そうじゃなくてわたしの愛を込めたお冷ッ!?
ちょ〜ちょ〜ちょうッ! なぁにをザレっと言ってしまってるんですかぽこさん……わたしが言ってたサ〜ビス〜ッ? え〜、わたしそんなこと言ったんだったかなぁ。うわぁ、考えなしにパカパカ口走るもんじゃないわなぁ。
あのぅ、ぽこさん。お冷は注ぎますけど、普通にですよ。普通に、ふっつうに注ぎますよ。 ぇ〜話が違うと言われましても当店はそうゆうサービスはいたしておりませんので……て、なんですか店長? 特別に今だけ許可するてなにいってんですかッ。仕返しですね、閑古鳥どうたら性癖どうたらと言った事への仕返しをするつもりなんだなっ!
自慢じゃないですが、わたしはそんなメイドカフェのキャワワな技術なんて一切持ってま――はぁっ、教えてやるて、なんで店長知ってんの? 昔ちょっと? 店長おっさんですよね、なんでそんな作法を知ってんすかッ。なんかちょっとウキウキなのキモいっすよ店長。
おぅふっ、おっさんが指でハート作って、あれをやる破壊力はすげぇや。それを今から自分がやるという羞恥を繰り返すこの拷問タイム。くあっ、元は自分の口から出た災い。したらば一瞬で終わらしてやるぞオラァッ。
はいはーい、ぽ、こさぁ〜んっ。大変おまたせしましたぁ。今からぁ、お冷にわたくしめ、の、愛をっ、注がせていただきま〜す。
すぅ~はぁ〜、スゥー、ハアァァ〜。ウッシャッ、では、いきますっ!
アナタのハートにもっえもえキュ〜ンッ。お、いしくな〜れ、美味しく〜ッ、な・アッ・れぇぇ〜〜、はい、めしあがれ〜。キャハッ♡
うわあぁぁッコロせ今すぐコロシテクレエェッ!
おい、店長笑ってんじゃないって――録音したいからもう一回てぽこさんッ!
ふへへへ……うんっ、や・る・わ・きゃねえだろッ!
お冷飲めッ!?
はいはーいなんすかぽこさんいまてんちょうをしめてきたところなんですけど。あーおひやおいしいですかぁよかったですねぇ、二杯めからはふつうでーすというかセルフで注げッ。
いや、わたしの口から出た災いなので、別にそんないつまでも怒ってません怒ってませんてばよっ。もう! そんな人畜無害なタヌキさんみたいな顔してるのに意地悪な事も言う人だと思いませんでしたっ。やっぱり兄貴の友達は兄貴の友達というわけだったんですね、くぬぅッ。
はい? 今からちゃんと売り上げに貢献しますですと? アハハァ、そういう事ならプリプリいたしませんともはい。しっかりバイト代の養分となっていただきた〜い。
えと、待ってくださいよぅ。特製ビーフカレー大盛りに、ピーナッツ入りコールスローサラダ。あと飲み物はオレンジジュース。お、カレーにオレンジジュースとはわかってるじゃないですかぁ。やっぱ辛味には酸味のアクセントでサッパリちゃんですよねぇ。昔からの鉄板な組み合わせと烈風正拳突きな空手家も言ってました! まぁ、ウソですけど。うーん、なんで空手家と言ったんだぁわたしは?
ま、いいか、店長おーい、ご注文ですよー。
はい、ぽこさん。お待たせしましたぁ。ご注文を繰り返させていただきまぁす。
特製ビーフカレー大盛りに、ピーナッツ入りコールスローサラダ。オレンジジュースとヨーグルトケーキでぇす。え、最後のは頼んでない? あぁ、これは店長からのサービスですって、これからもご贔屓にという事で。はい、ですから遠慮せずにいただいて、え、それならケーキ用に食後のコーヒーも注文したい? キリマンジャロ、ホイホイ、ではまた注文承りました〜。
はい、どうぞ食後のキリマンジャロコーヒー
やっぱ、タヌキに似てるから?
ほほう「
ん、それはそれとして? なんかそう言われるとアレだなぁ。いえいえ、こっちの話ですよはぁぃ。続きをどうぞ。
あぁ、はい、このお店の雰囲気が気に入って貰えましたか、それはよかったです。わたしもこのお店の雰囲気が凄く好きでしてねぇ。勢いで募集無いのにバイト受けちゃいまして、へへへ。まぁ、まさかの即日秒で採用はビビりましたけども。
はい、あまりお客さんが来ていない。うーん、そこが困りもんなんですよねぇ。わたしがこうやってぽこさんと話していられるほどお暇な状況てのも問題だとは思うんですけどねぇ。どうにかならないものかぁ。
あ、お帰りですか、はいはい、ご会計はあちらまで――ぇ、次も来るかもて、本当ですかッ、それはありがたいです。ンフフ、このまま常連に引き摺り込めるように頑張りますから覚悟しといてくださぁい。主に頑張るのは店長ですけど、アハハ。
はい? わたしのシフトを教えて欲しいて、妙なこと聞きますねぇ。ん、ぽこさんを常連に引き摺り込みたいのならとても必要な事なんですかぁ。え〜、それじゃあまるでわたし目当てでくるみたいじゃないですかぁ。へ、嘘偽りなくそうだと……なんですとぉっ! と、危ねえリップなサービスに騙されるとこだったぜ。
まぁ、それはそれとして、別にシフト教えるのは不都合じゃないですよ。
あ、そうだせっかくだからID交換しときましょうよ。そこでシフトは教えるという事で、ん、二回しかあった事のない男にそれは軽率すぎるんじゃないかって……あぁ〜、そういやわたしとぽこさんてまだ二回しか会った事ないんですねぇ。なんかずっと前からのお友達て感じしてましたよぅ。なんだろうなぁ人畜無害そうな雰囲気? 安心できるオーラが強すぎるのかなぁぽこさんは。まあ、でも兄貴の友達だしそれならわたしの友達とも言えるんじゃないです。よくわかんない理屈? あはぁ、そうかも知れなぁい。まま、ぽこさんの事は信用してますから大丈夫です。このわたしが言うのだから間違いないッ。人を見る目があるのは取り柄でして――は、凄く心配になってきたって、なぁんで?
ま、いっか。それじゃぽこさん。ちょっぱやでスマホ取ってくるんで待っててください。
あ、店長。ちょっと会計よろしくおねがいしま〜す。
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