㐧弍拾弍話 汚らしい不屈
憤りを隠せない中、俺は視界に僅かな影を見つけた。
飯島が、恐ろしいほどの表情を……それこそ……
なんと表していいかわからないほど憎悪に満ちた顔で向かっている。
無駄かもしれないのに。
転生した陰キャには計り知れないほどの……人生の重み、苦しみ、悲しみを、嫌でも感じてしまった。
命に代えても構わない何かを失い、その無念を全力をぶつける顔。
その表情が、こっちが悲しくなるほどに感じてしまった。
悲壮にまみれて……幸せの選択肢を失い、それでも抗う男の顔に。
「
「無駄だよ」
必死に発動した技すらかわされてしまう
まるで全部見切ったかのように。
「てめぇ、まだ、凡人の思考だなぁ?」
シザースの横で、虚空に舞う細かな氷の結晶。
それは美しく、そして絶望への答え合わせに見えた。
「凡人のな、思考なんて……手にとるようにわかるんだよ……。」
終わりだ。
また死ぬんだ。
ホームに突き落とされたときと同じように。
強大な力に、俺は殺されるんだ。
諦めの思考を完結させたその瞬間、黒光る何かを俺の眼球は捉えた。
傷だらけで欠けても、命を懸けたその黒光りの腕を。
「何諦めてんだよ……! この根性無しァが……!!!」
飯島の、黒光りの鉄腕が……大きくシザースを捉えた。
「くたばれ………………このビチグソハサミ野郎ォォォォッッ!!!」
黒碗が軋みながら、奴のハサミを抑える。
その腕は毎秒ごとに欠けるが…飯島は気にも留めない。
「そんなに仲間の命が大事かァ……ははは!友情ごっこもここまでくりゃ傑作だなァッ!! 最高だよッ!!」
「そんなに友情が大事なら……その友に免じて、死ねッ!」
シザースの異常なほど敵意を孕む刃が飯島を襲う。
「やめろッッ!!! 逃げろ飯島!」
声帯をギリギリまで使って出した声。
「ウオアアアオオオオオアアアオオアアオアッッッ!!!」
その決死の声さえ届かない。
運命はもっと真っ当に来ると思っていた。
だがこんなにも、恐ろしく、悍しく、そして現実味を持って襲ってくる。
そう思い込んでいた。
「さあ来い……天国への片道切符を切ってやるよ……飯島ァァァァァァ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます