空から本が降ってきたので世界平和を目指します。

@candoll

第1話 ある日突然。

 アニメや絵本で見たキャラクターに憧れて、将来はおっきなお城に住みたいと本気で思っていたのは何歳くらいまでだっただろうか。

 あの頃は本当に、庭の花の上を飛び回る蝶の柄は妖精さんが描いていると思っていたし、壁と冷蔵庫の狭い隙間は異世界への秘密の扉だと思っていた。


 小学校低学年で「現実」を知った私は、残念とも思ったがそれと同時に納得もしていたと思う。

 だって、妖精さんがいるなら会えていないのがおかしいし、ニュースにならないっていうのも変だからだ。(今となってはこの考えについても論点がずれていることは百も承知だ。)


 まあそんな感じで16年、立川蒼空たちかわそらという名前で現実世界と向き合ってきたわけだが、絵本こそ読む機会が少ないもののアニメは大好きだし、ファンタジーな小説も大好物だ。


 でもやっぱり、頭のどこかで何か起こらないかなあということを思ってしまったりもする。


「あーあ、何かファンタスティック!なこと起こらないかなあー」


「あのねぇ、それ今日何回目?何年か言わなくなったと思ったら最近またぼやきだし    て。しかも、今日は異様に多いじゃない。いい加減うるさいんだけど?」


「だってお母さん。今日は土曜日だよ?しかも空には白い雲がたったの一つだけ。おかしいと思わない?」


「微塵も思わないわ。ただの晴れた休日よ。ほら、若者は外で遊んでくるなりしなさい。ついでに洗濯もの取り込んどいてー!」


「え~やだやだ無理無理やりたくないよぉ」


 穏やかかつ何か起こりそうな予感に浸っていたというのにちゃっかり仕事を押し付けられてしまった。

 体重を預けるようにしてクリーム色のドアを押し開ける。最近は湿度が高いので木が膨らんでドアが開きにくくなっているのだ。


 洗濯物を取り込む用のかごを持って物干しざおへと足を進めたとき、違和感に気が付いた。


「え?は?ええええええ?ち、ちょっとまっっっって?うん?はい?え、あ、ど、

 どうゆう状況?」


 空からぷわりぷわりと本が降ってきていた。







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