第3話

 部活も引退して、彼と話す機会がなくなった。話すどころか、会うこともなくなってしまった。


 なくなってしまったってなんだよ。会いたいみたいじゃないか。


 放課後、みんなで集まって雑談するのが恒例だった。

 気まずいのか、彼は彼の友達とさっさと帰ってしまう。

 私は、それを横目で見て肩を落としてしまう。


 なんで肩を落とすの。未練あるみたいじゃないか。


 彼との未来は消えてしまったが、それでも過去は間違いなく存在していた。

 LINEの履歴、彼の写真、私の日記は消えることなくここにある。

 それらを通して見える愛情に、また悲しみがこみ上げてくる。


 あぁ違う、悲しくない。私は、彼と一緒に居ることが出来ないと思ったから。

 間違ったことはしてないと胸を張って言えるのに、なんでこんなに悲しく――


 そこにある感情は、綺麗なものだったはずなのに、こんなにも汚く見える。醜く見えてしまう。

 早く遠くに隠したい。見えないところに仕舞いたい。本心ではないけれど、捨ててしまいたい。

 でも、そんな場所はどこにもない。

“裏の裏は表”と言うけれど、どれが裏でどれが表なのだろう。

 自分のことなのに、なにも分からなくなった。

 分かるようになるのを待てばいいのか?

 どれくらい、待てばいいのだろうか……


 彼はもう前に進んでいるのだろうか。

 だとしたら、確実に前に進めていない止まってしまった私の間に大きな隙間があるのだろう。

 自分の素直な感情が分からず、自分にすら正直になれない私は“天性の弱虫”なのだろうか……

 そうに違いないな。


 彼に渡すはずだった無償の愛は。

 溢れて止まない愛の言葉は。

 今もまだ想い続けてしまっている私の心は。

 どこに、誰に、譲り渡せばいいのだろう。

 他の誰かに譲っていいものでもなくて。ただ単純に、純粋に好きでいることもできないけれど。

 それでも渡す先なんてあるはずもないのだから。

 また、彼と“友達として”笑いあえる日が来ることを待とう。


 ――待ちきれないや。

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