〈読み切り〉星のこえ

猫川 雪佳

-星のこえ-

「どうしてここにいるんだっけ…」


これはとある夏のお話


流響 星(りゅうきょう ひかり)は星空の綺麗な田舎町に住むごく普通の大学生である。

小さい頃から星空を見ることが好きで、家族と旅行に行くこともあった。

そんな彼だが、数日前に両親を亡くし

ショックのあまり、学校を休みどこかに向かってふらふらと彷徨っている。


何日も何日も彷徨い続けた。

しかし、所詮は人間。

一睡もせずに歩き続けた彼はやがて倒れ込むようにして寝てしまった。


「…きて……起きて…」


ふと目が覚め周りを見渡すが、目がしょぼしょぼしてあまり見えない…

目が慣れてきたのか見えるようになり

夕方であることだけを認識した。


だが、先程の声の主がどこにも見えない。

夢だったのか現実だったのか、

それすらもはっきりと思い出せない。


疲れが取れ、精神的にも落ち着き、記憶が戻ってきたが、ここに来るまでのことを覚えていない。

「どうしてここにいるんだっけ…」


「確か家の布団で寝てたような…」

記憶が曖昧で思い出したいことが思い出せない。


「そういえばこの場所見覚えが…」

多少の記憶を頼りに道を進む。

開けた場所に出た。


いつの間にか日は落ち、空には星空が広がっていた。

この場所にたどり着いた彼を励ますかのように星はキラキラと輝いた。


『…懐かしいわね……』

『そう…だな』


ふと後ろを振り返る。

やはり誰もいない。でも、この声は…


声を聞いた瞬間

全て思い出した。

彼は彷徨っていたのではなく

ここを目指していたのだ。


ここの名前は-星合峠-

別名 星逢峠

昔、母方の祖父が亡くなった時に家族全員でここへ来て、母親だけが祖父の声を聞いていた。


もしかしたら…さっきのは…。


両親はこのことを知っていて俺をここまで導いたのか…?


「俺もう少し頑張るよ。」


『『…頑張……ね』』

頑張ってね…そう聞こえた気がした。


それからというもの毎年ここに来るようになった。家族と仲良く話す為に…



星はいつだって先を示してくれる。

彼のように星逢峠に導かれたのなら…


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〈読み切り〉星のこえ 猫川 雪佳 @sekka_enju

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