さるのしっぽ(旧)
雨世界
1 みんなのこと、大好きだよ。
さるのしっぽ
つないだ手と手
いつも、本当にどうもありがとう。
みんなのこと、大好きだよ。
学び舎
私の大好きなもの。
私の生まれた世界は、(病院に入院するまで、全然気がつかなかったけど)すごくたくさんの大きな愛で満ちていた。
私の大好きなものってなんだろう? とそんなことをつばさは考えてみる。いろいろある。なんだか考えてみると結構いっぱい好きなものがあるなとつばさは思った。(案外私は幸せ者だったのかもしれない)
大きな桜の木の上に腰を下ろして、見慣れた自分の小学校の自分の通っていた六年一組の教室を白いカーテンの揺れている開けっ放しの窓越しに眺めながら、そんなことを夢の中でつばさは(すっごく暇だから)一人、暖かな春風の中で考えていた。
窓の向こう側
なに見ているの?
ちょっとだけ、お昼寝するね。
小学六年生の小早川つばさは窓の外を眺めていた。
すると「なに見てるの? つばさちゃん」と友達の小林ひかりがその背中に声をかけた。「……別になんにも見てないよ。空、見てただけ」
窓の外を見ながらつばさは言う。
「空? 空って今日の曇り空のこと?」
つばさの隣に立って、朝からずっと曇っている今にも雨が降り出しそうな空を見て、ひかりが言う。
「うん。その曇り空のこと」いつものように、小さな声でつばさは言う。
「ちょっと外に行ってくる」少し間をおいて、つばさは言う。
「え? つばさちゃん外行くの? 珍しい。じゃあ私も行く!」と顔を赤くして、ちょっとだけ興奮したような顔をして、ひかりは言う。
「いい。一人で行く」つばさは言う。
するとひかりはとても悲しそうな顔をした。
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