第34話
「試験、開始」
先生の開始の合図でテスト用紙の紙を裏返して問題を解き始める。
今日は待ちに待ったテスト当日。
絵美里はこれまでも高校受験以来の真面目さでテストの勉強をしていて、このテストではもしかしたら三十位以内に入ることが出来るかもしれないくらいには頑張っている。
今までサボってきていてここまで出来るようになるのは、一重に絵美里の努力だからと言えるだろう。
僕たちと一緒に勉強するのはもちろんの事、家に帰っても一人で勉強していたからね。
絵美里はテストが始まるまでがちがちに緊張していたが、僕が抱きしめて頭を撫でてあげると段々といつもの調子を取り戻して今ではテストに真剣に臨んでいる。
冴姫さんはというと彼女はいつも通りのような感じがしているけれど、前のテストと同じかそれ以上の鬼気迫る感じでテストをし始めている。
僕に負けたくないのと、どうやら本気でご褒美が欲しいらしい。
何を頼まれるのか少しだけ怖いけれど、楽しみでもある。
どっちみち、彼女が勝っても負けても僕は彼女にご褒美を上げたいなって思う。
だけれど、負けたくはないので僕もこれまで前のテストと同様に一生懸命勉強してきた。
負けないよ、冴姫さん。
「はい、終了です。ペンを置いてください。解答用紙を後ろから送ってください」
先生が回答用紙を集め終わり、集計を終わらせる。
「今日でテストは終了となります。お疲れさまでした」
テストが終わった。
最終日まで気を抜くことをせず、精一杯頑張ったから僕はかなりいい成績を残せたのではないかと思う。
前回より、数学が難しかったのでそこは少し落としてしまったと思うけれどそれは他の人も同じだろうから大丈夫だろう。
他のものは前回と同じかそれ以上なので、もしかしたら一位を狙えるのではないかと思っている。
「晴夏―、とっても疲れた」
「よく頑張ったね」
「テスト、もぅ嫌。でも、今回のは結構自信ある」
燃料が切れたように僕の方へと倒れ込むようにしてくるので、僕は絵美里の事を抱きとめる。
絵美里も最後まで挫けることなく走り抜けることが出来て、いい結果を残せることだろう。
「晴夏君、お疲れ様」
「うん、冴姫さんもお疲れ様。どうだった?」
「それは.....秘密です。でも負ける気はしませんよ?」
「僕もです」
「結果が返ってきたときが楽しみですね」
冴姫さんはものすごく自信ありげだ。もしかして、全教科ものすごい高得点なのか?いつも高得点を取っている冴姫さんがあの表情なのだから。
で、でも僕だって結構自信があるんだけれど。
「お昼どうしますか?」
テストが二時間目までしかないため、お昼はまだなのだ。
「私、晴夏の作ってくれた炒飯食べたい。炒飯じゃなくても晴夏が作ってくれたものすっごく食べたい気分」
「冴姫さんも、僕が作ったもので良いですか?家まで帰る時間とか作る時間で少しお昼が遅くなっちゃいますけれど」
「私も、晴夏君の手料理が食べたいわ。晴夏君の愛情がたっぷりの手料理が他の何よりも美味しいから。だから時間が遅れることなんて厭わない」
食い気味に冴姫さんが肯定してくれたので、お昼は僕の家で食べることに。
絵美里が炒飯食べたいって言っていたから炒飯を作ることにしよう。ギョーザとかも手作りしたいけれどその時間はないから、また今度かな。
絵美里は僕の炒飯が好きだと言うけれど、そんなに変わったことなんてしていない。
炒飯はあまり時間をかけずにさっと作った方が僕は良いと思っているので、高火力でさっと炒める。
お皿にそれぞれ盛り付けて、絵美里と冴姫さんに振舞うと二人とも美味しそうに食べてくれるので作った僕はものすごく嬉しい。
「あぁ、きっと近い未来には毎日晴夏君の手料理を食べられるようになっているんでしょうね。今からそう思うと待ちきれません」
「そうだね」
それはちょっと早すぎない?あと大学は行ってから卒業して、お互い社会人になってからだと思っているから、まだ五年くらいはあると思うけれど。
まぁ、恋をしていれば時間なんて経つのはあっという間か。
この時の僕はそう思っていた。
近い将来とはそんな五年も先の話ではないということを知ることに成るのも、また近い将来だった。
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