第33話
「うぅ........分かんない」
「そこはね、この数式を代入して」
冴姫さんが絵美里の勉強を見てくれている。
絵美里も苦戦しながらも問題に向き合いしっかりと解けている。
絵美里は成績は悪いけれど、自頭は悪くは無いし勉強が全くできないわけではないのでやろうと思えばテストでも高得点を取れる。
この高校に入っているから頭は悪く無いのだから、しっかりと勉強をすればあわよくば目標である三十位以内に入ることが出来るだろう。
それにしても、この二人凄く仲がいいんだよな。
まるで姉妹を見ているような感じがする。冴姫さんがお姉ちゃんで絵美里が妹で。
冴姫さんという完璧なお姉ちゃんが、少しだけドジな妹の絵美里を可愛がっている感じ。
「冴姫、ちょっと休憩しよ?」
「そうね、あまり詰め込みすぎてもいけないし休憩しましょうか」
今日は休日の昼間。
朝の九時から僕の家に集まって、勉強を開始してから二時間ほど経過している。絵美里の集中力を鑑みると、ここら辺で切り上げたほうがいいだろう。
「晴夏ー、疲れた。私、頑張ったよ?」
「はいはい、よく頑張った」
猫なで声を出して甘えてくる絵美里を抱きしめ返して、頭を撫でてあげると嬉しそうに僕の腕の中で身を捩る。
「晴夏君、私も教えるの頑張ったのだけれど?」
「冴姫さんもありがとうね」
片方の手で冴姫さんの頭を撫でてあげると幸せそうな僕と絵美里以外には絶対に見せないような顔をしている。
顔が蕩けてしまっていて少しだらしないけれど、普段キリッとしている冴姫さんだからこそこういう顔をしていると物凄くキュンとする。
二人を抱きしめて頭を撫でてあげたりしていると、時間というものはあっという間に過ぎていってしまうもので、勉強を再開しようと思ったらもうお昼の時間となっていた。
「お昼だし、僕が作ることにしますか」
「晴夏が作ってくれるの?やったー!!春香の料理好きだから嬉しい」
「晴夏君の手料理…」
「そういえば、冴姫さんに手料理を振る舞ったことなかったですね。お弁当の話も色々あって流れてしまいましたもんね」
「そうね、楽しみにしてる」
さてとキッチンに立って、早速料理を始める。
今日はあまり待たせるのも悪いし、簡単で美味しいパスタ系のものを作ろうと思う。
トマト缶とかがあるし、トマトパスタでいいかな。
冴姫さんにトマトは大丈夫か聞いてから調理を開始する。
細かいニンニクとオリーブオイルと、絵美里が厚切りのベーコンの方がいいから、厚切りのベーコンを入れて炒める。
ベーコンが焼けたらトマトを入れて塩胡椒も追加して味を整えてから、茹でていたパスタの水をよく切ってからフライパンに入れてソースと絡めて盛り付ける。
味見をすると、結構いい感じに出来たので冴姫さんも喜んでくれるといいんだけれど。
作り終わって振り返ると、冴姫さんがジィッと僕のことを熱で浮かれたような瞳で僕を見ているのでどうしたんですか?と聞くと…
「料理している私の夫の姿が格好良くて見惚れてしまいました」
夫って。気が早いとは思うけれどそこまで考えてくれていて僕としてはすごく嬉しい。
「だよね、晴夏の料理してる姿ってすごく格好いいし、楽しそうにしてるから私も好きなんだよね」
「ありがと、絵美里」
「本当のことを言っただけだもん」
テーブルへと料理を運んで、席へと着く。
「「「いただきます」」」
冴姫さんが、パスタを口へと運ぶ。
大丈夫かなと思って、見ていたけれど冴姫さんは物凄く美味しそうに食べてくれているので大丈夫そうだ。
絵美里も同じように幸せそうに食べてくれているので安心した。
「晴夏君が作ってくれたパスタ、すっごく美味しい」
「晴夏の料理、相変わらず美味しい。私の胃袋はもう晴夏掴まれちゃってる」
「ありがとね」
二人は黙々と僕が作った料理を食べて、完食してくれた。
「さて、絵美里。休憩も終わったからまた、勉強を始めましょうか」
「そうだね。ご褒美のこともあるし、頑張らないと」
「そうね」
僕も今度こそ冴姫さんに負けないよう頑張らなければ。
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