第31話
絵美里と冴姫さんと同時に付き合うという世間一般的にみるといびつな関係が始まってから、ニ週間もすると僕自身もそのことをやっと消化できて、二人と真剣に向き合うことが出来ている。
少しだけ、二人のアタックが過激というか、受け止め切れないものもあったりするけれど。
だって、あの人たち平気で教室でくっついてきて、離れてくれないし冴姫さんなんて僕が彼女の事をふとした時褒めたら、感極まった様子で僕の頭を胸に抱き抱えてよしよしと赤子のように撫でられたし。
絵美里も負けじと、胸とかを座っている僕の頭に乗っけたりしてくるし、正直こちらの性欲がもうすぐ爆発してしまいそうだから勘弁してほしい。
僕たちまだ付き合って一か月経つか経たないかぐらいだし、二人の事を大事にしたいから。
まぁ、そんなわけで二人との交際は順調に進んでいる....と思う。
今はもう、周りの眼を気にするのは止めた。
二人が全く周りを気にしないし、何か言ってくる人がいたら言葉の刃で切り捨てていくから僕が気にしても仕方が無いことに気づいた。
あのいつも明るく振舞っている絵美里が、僕の事を悪く言った男子に対してものすごく冷たい態度と表情で「お前に何か言われる筋合いないよね?黙っててくれる?キモいから」と言った時は流石にびっくりした。
その男の事は少しだけ交流があったみたいだけれど、もう二度と話すことは無いそうだ。というか、僕に疑われたくないから男の事は極力話さないと言っていた。
冴姫さんは相変わらず言葉の刃が本当に鋭くて、並み居るイケメンたちがボコボコに言われていたのが印象的だった。
特に僕に対して悪口とか釣り合っていない等の言葉を言った人に対しては、その人を殺してしまうんじゃないかって言うくらいの眼差しで、「逆に貴方と私が釣り合うとでも?私、人間としか付き合えないので」と言い返したときは少しだけ怖かったけれど、頼もしかったし格好良かった。
振り返って僕を見た時はもう、甘えている時の表情だったからそのギャップにキュンとした。
そんなわけで、最近は順調に付き合えているわけだけれど
「晴夏君は、大丈夫なのは分かっているのだけれど絵美里、あなたの事が心配だわ」
「....だ、大丈夫だよ」
「本当なの?」
「う、うん」
いつものあの場所。
絵美里が加わることに成って少しだけにぎやかになったあの場所で、冴姫さんが絵美里の事を問い詰めていた。
絵美里は目を逸らしながら、冴姫さんがそれをジト目で睨むような形だ。
冴姫さんのジト目が凄く可愛い。
「じゃあ、聞くけれどあなたのテストの順位は?」
「え、えーっと…中間くらい?」
まぁ、確かに少し盛って中間くらいだけれどね。
「このままでは、私と晴夏君と同じ大学には行けませんよ?」
「ま、まだ時間もあるし大丈夫だよ。三年生から始めれば…」
「って言って高校受験の時、僕に泣きついてきたよね」
「晴夏ぁ、余計なこと言わないでぇ。私の見方でいてよぉ」
「ごめんね、でもこれも絵美里を思っての事だから」
僕も絵美里と冴姫さんと大学を通いたいなって思ってるから。
如何したらもっと絵美里のやる気を引き出せるかな。
....
..
.そうだ、これならもしかしたら。
「じゃあ、これならどうかな?絵美里が学年三十位以内に入ったら僕が何でもしてあげる」
「え!?な、何でもって本当に何でも?」
「うん、どんなことだっていいよ?あ、でも一億円欲しいとか無理なものは無理だけれど」
「そんなこと言わないよ。何でもかぁ。その言葉、嘘はないんだよね?」
「うん、こんなことで嘘はつかないよ」
「......分かった、頑張ってみる」
絵美里が覚悟を決めた顔をする。
でも絵美里には内緒だけれど、三十位以内を取れなくたって頑張っていたら何でもするつもりだし、そんな約束しなくても絵美里になら何でもしてあげるんだけれどね。
頑張ろうと決意をした絵美里の横で、冴姫さんがこっちを物欲しそうな顔で見ている。
「ね、ねぇ、晴夏君。それって私にも適応される?もし私が学年一位を取ったら晴夏君は何でもしてくれる?」
「そうですね、絵美里だけって言うのも違うと思いますから冴姫さんが学年一位を取ったら何でもしますよ」
「本当ですよね?何でも、してくれるんですよね?」
「う、うん。何でもするよ。あ、でも次こそ負けませんからね?僕だって一位を取ってみたいんですから」
「........いくら晴夏君とは言え、負けられませんね。私の彼氏さんからのご褒美がありますから」
その彼氏さんが僕なんだけれどね。
もし万が一、僕が勝ってしまったとしても絵美里と同じように霧姫さんは絶対に頑張るだろうからご褒美は確定しているけれど、やる気を向上させるために黙っておこう。
「あ、でもそれでは晴夏君が、頑張った時のご褒美がありませんね。そうですね....私としては晴夏君になら何時だってどんな要求だって叶えて差し上げますし…そうですね、晴夏君はいつも通り頑張ったら私を好きなように使ってくださって構いません。........いえ、それは、私にとってご褒美になって仕舞うのでは?........あぁ、どうすれば」
あわあわと慌てて、いろいろ考えを巡らせている冴姫さん。
冴姫さんを使うことが、ご褒美になるって........その先は深く考えないようにしよう。
「とりあえず、晴夏君も頑張っていたらご褒美を差し上げます」
「分かりました」
そんな感じで、テストに向けての勉強会が始まった。
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