第24話
霧姫さんの過去を聞き、そして二人で幸せになろうと誓い合った休日が終わり、学校が始まった。
「おはよ、赤塚」
「おはよう、羽鳥」
「どうしたんだ?なんか、あったのか?」
「何が?」
「いや、赤塚の顔が嬉しそうにしているから、なんかいいことあったのかなって思って」
「いい事か.........うん、あったよ」
正直、僕は霧姫さんと付き合うことが出来て浮れているんだと思う。
「ふぅーん、何があったのか分からないけれど良かったじゃん」
「うん、ありがとうね」
そのまま羽鳥と雑談をしながら、絵美里を待ちながら朝のショートホームルームが始まるまで喋っていると.........
「おはようございます、赤塚君」
「.........えっ?」
僕の席に霧姫さんが来た。
今までのようにあの図書室だけでいろいろその.........イチャイチャするのかと思ってたから、びっくりした。
「おはようございますは?」
「おはようございます、霧姫さん。ど、どうしてここに?」
「どうしてって、あなたに朝の挨拶をしたいからに決まっています。それに、赤塚君とおしゃべりをしたいので」
「良いんですか?」
「なにがですか?」
「その.........僕たちの関係がバレますよ?」
と小声で言うと、ぽかんとした顔をしてから、クスクスと嗤う。
「なんで、隠す必要があるんですか?赤塚君と、私が付き合ってること」
と先ほどより大きな声でそう言ってしまう霧姫さん。
教室中がシーンとして、固まってしまう。ほら、やっぱりこうなった。
「「「「「「えーー---!!!!」」」」」
クラスのみんなが言葉の意味をやっと咀嚼して理解したのか、ものすごい絶叫がクラスに響き渡る。
「赤塚君、私、とっても寂しかったです。あなたと離れている時間がどれほど苦痛だったことか」
「ちょ、霧姫さん!?」
椅子に座っている僕の膝の上に跨って向かい合う様な形で大胆に座って来る霧姫さん。
僕の頬を両手で包み込みうっとりとした表情になって僕を見つめる霧姫さん。
「だぁーい好きですよ、赤塚君」
「き、霧姫さん、ここ教室、教室だから」
そのまま僕の事を抱きしめて頬ずりしてくる霧姫さん。クラスのみんなは絶句していて何も言葉が出ないみたいだ。
ショートホームルームが始まるまで、霧姫さんは僕の傍から離れようとしなかった。
その日の学校中の話題は僕と霧姫さんが付き合ったという話題で持ちきりだった。
そして、何故か今日、絵美里は僕を避けるようにしていたようで一回も話すことが無かった。
放課後になり、いつもの場所へと行く。
霧姫さんはどうやら先に行っているみたいだ。今僕たちは、物凄い注目を浴びているから、二人で一緒にあの場所へ行くとあの場所の存在がバレてしまうからそれぞれ内緒で行くことになった。
「お待たせしました」
「全然待ってないわ。あなたを待つ時間すら愛おしいもの」
霧姫さんは人が変わったように、僕に熱烈な愛を囁いてくる。それはもう、凄いくらいに。
だけれど、根本的なことは変わっていないようで他の人が彼女に喋りかけてもまったく相手をしない。
こんな一件が今日の昼休みにあった。
「き、霧姫さん」
「なんですか?私はあなたと喋る事なんて何もないので手短に」
「な、何でもないです」
とクラスの男子が喋りかけても終始こんな感じだったので、他の人に接するときの態度は変わっていないようだ。
「赤塚君、なんで隣に座らないのかしら?」
「いいんですか?座っても」
「いいに決まっているではないですか。私とあなたは恋人なんですよ?」
いつもは対面に座っているけれど、今日からは横に座ることに成りそうだ。
「.........ごめんなさい、赤塚君。少しはしゃぎすぎかしら」
「い、いえ。そんなことないですよ。新しい霧姫さんの側面が見れていいなって思いますし」
「そ、そうかしら?なら、もう少し甘えてもいいですか?」
「はい、もちろん。僕はあなたの彼氏ですから」
「じゃ、じゃあ」
僕の腕を掴んで自分の豊満な胸に抱え込む。
「私、気付いたんです」
「何をですか?」
「意外と、っていうかかなり私は束縛が激しいことを」
「束縛ですか?」
「朝のあの騒動だって、みんなに私の赤塚君、赤塚君の私だと見せつけるためにあんな大胆な行動をとったんです」
「そうだったんですね」
「ただ、単純に気持ちが抑えきれなかったことも大きいですけれど」
さらに僕にくっつき鼻を僕の服にくっ付け「すーはー」としている霧姫さん。
なんだろう、言っては悪いような気がするけれど、少し変態チックだ。
「私、あなたとの恋が叶うなんて思ってませんでしたからあなたへの思いが肥大化しすぎて止まらないのです。あなたを好きという気持ちが」
辛抱堪らなくなったのか、腕を抱きしめるだけじゃ飽き足らず、朝のように僕の膝の上に向かい合って座り、首に腕を回して抱きしめてくる。
「あなたと離ればなれになると、心が壊れてしまうんじゃないかってくらい苦しくなりますし、あなたが他の方と喋っていれば殺したいほど相手の事を憎く思ってしまいます。気持ちが暴走してしまうんです」
「そうなんですね」
僕は彼女の頭をゆっくり優しく撫でて気持ちを落ち着かせてあげる。
「こんな私、嫌いですか?嫌ですか?嫌なら言ってください。あなたのためなら幾らでも直しますから」
「嫌なわけありませんよ。霧姫さんがそれだけ僕の事を思ってくれているってことですもん」
最初こそ驚きはしたものの、別に嫌ではないしむしろ嬉しい。
あの霧姫さんにここまで言われるなんて思ってもなかったから。それに、単純に好きな人にここまで愛されて嫌いな人はいないだろう。
「そうですか、では今以上にもっとくっついても良いってことですか?」
「いいですけれど、教室ではダメですよ?節度を守らないと」
「............どうしてもだめですか?」
「うっ............」
破壊力抜群な顔で、僕の理性を溶かしてくる霧姫さん。
「ダメ、ですか?」
「...........少しくらいならいいですよ」
「分かりました、少しですね」
にっこりとほほ笑んでくれる霧姫さん。
本当にわかってくれているのだろうか?
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