第19話 纏まらない
頭の中がぐるぐるとして、纏まらない。
私はベッドに倒れ込んだ。
私にとって、彼はどういう存在なのだろう。そのことをずっと家に帰ってから考えてはいるけれどまったくもって正解が導けない。
友達..........ではない。
私は、友達を作ってはいけないから。自分の愚かさへの戒めだから。友達何て作らないし信用はしない。
彼と和たちの関係は謂わば、借りた恩を返すというただそれだけの関係だった。それ以上でもそれ以下でもないはずだった。
だけれど、最近ではどうだ?ただの恩の貸し借りだけの関係なのか?と疑問を持ってしまったら最後。私は抜け出せない迷宮の中に足を踏み入れてしまった。
本当なら、この前のテストでもうあの関係は切れていたはずなのに、私が半ばいちゃもんのような形で彼をあの場所へ繋ぎとめた。
理由なんて分からないまま。ただ、理由は分からないがあの場所でのやり取りを終わらせてはいけないと思ったのだ。
いつしか、彼の事を目で追うようになった。そして絵美里さんと会話している時はこれ以上ない程心がムカムカした。
この感情は............いや、だけれど。
心当たりが一つだけあるが、私はその可能性を否定している。
「恋............」
これが私が彼に向けている感情なのか。赤塚晴夏という少年に私は恋をしているのだろうか?生まれてこのかた誰かを好きになるという感覚がないため分からない。
それに、もし仮にそうだとしても私は恋人など作ってもいいのだろうか?親しい間からになる人を作ってはいけないのでないか?
私は、まだ彼女に許しを貰ってはいけないのではないか。私が彼女の人生を奪ってしまったのだから。友達ではなく、恋人だからというのものは詭弁でしかないのではないだろうか?
頭がおかしくなりそうな程、ぐちゃぐちゃと思考がまとまらない。
私はぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる。
彼に貰ったぬいぐるみだ。心がポカポカと温かくなって段々と気持ちの悪かったものが無くなっていく。
「ぎゅー」
どうすればいいのかな?とぬいぐるみに問うてみても答えが返ってくるはずもないけれど、誰かに縋りたい気分だったのだ。
私は、彼の事が好き.........なのだろうか?だけれど、絵美里さんと赤塚君が喋っているところをみるとどうしようもない不快感が込み上げてくる。
これは、嫉妬、というものではないのだろうか?それ以外には考えがつかないのだ。それを否定する材料は今のところない。
赤塚君といると楽しい、と感じられる。
いつしかあの時から止まっていた時計が動いていくような感覚だった。彼女と彼は顔は似つかないけれど、性格や行動はほとんど同じだったと言っていいくらいだ。
彼と彼女を重ねているのだろうか?と前にも考えた。まぁ多分、少しはどこかしら重ねているのだろう。無意識のうちに。
だけれど、私は彼を彼女だと思って接したことはない。彼を彼本人として見ている。とすれば彼にある彼女の面影を求めているわけではないのでないのではないか?
あぁ、もぅ訳が分からない。
この気持ちが恋なのかも、恋愛などしても良いのだろうかという気持ちと、彼に重ねた彼女を見ているのではないのかという疑問。
すべては彼のせいだと考えるのは簡単だけれど、それでは何の解決にもならない。
はぁ.........私はどうしたら。
もうすぐ、彼女に会う日だから。その時に.........
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「はーるーかー。ご飯まーだ?」
「ちょっと待ってろって」
霧姫さんを駅に送り届けて、帰ってみると絵美里がいた。どうやら明日の打ち上げまで待てないみたいで、家に来ちゃったらしい。
もう、今日のこれが打ち上げってことで良くないかとも思ったけれど、絵美里的には違うらしい。
「はい、出来たぞ」
「わーい。晴夏のチャーハン美味しいから好きー」
おとこ飯の代表格であるチャーハンを作って絵美里に出す。流石に体育祭で疲れているし遅くなっているから凝っているものなんて作れないから。
「やっぱり晴夏の料理って美味しいね」
「そりゃ、絵美里のための味つけにしてるからね」
「…え?私のために?」
「うん。絵美里に何回も料理振舞ってればどんな味つけが好きなのかなーとか大体わかって来るから。研究した甲斐があって良かった」
「そ、そうだったんだ」
絵美里はにんまりと満面の笑みを浮かべてまた炒飯食べ始めた。
そう言えば、霧姫さんって料理とか作れるのかな?いつもお昼は菓子パンみたいだし、お弁当とか作って持って行ったら喜んでもらえるかもしれない。
.........いや、お節介の焼きすぎか?だけれど、最近は一歩ずつ関係は前進していっている。別に教室のみんなのいる前でなければお弁当とか受け取ってもらえるんじゃないか?
「晴夏?どうしたの」
「いや、何でもない。それよりまだまだ炒飯あるから、どんどん食べて。体育祭でお腹減ったでしょ?」
「うん」
絵美里とチャーハンを食べつつお弁当の事をどうしよかとかんがえることにした。
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