ファンターチカ
泉 秋
ファンターチカ(前編)
「その袋、何が入ってるの?」
「ん? これ? この中にはねー、栄養たっぷりの果物がつまってるの」
「わあー、見てみたい!」
キャピが少し重たそうにかついでいるポピー色の袋を見て、星のリャーサーたちが集まってきたよ。
「ほーら、どうぞ!」
キャピがドシンと砂の上に置いて袋の口を大きく広げると、まばゆいばかりに光り輝く果物がパラパラ~っと転げて散らばった。
リャーサーたちは、びっくり顔になって、でもすぐに目をキラキラさせて、ひとつひとつ、手に取ってじっくり眺め始めた。
「これって、マンゴー?」
「これってパイナップル?」
「これってドラゴンフルーツ?」
「これってバナナ?」
「これってブドウ?」
「うん、どれもこれも、あっちの、ほら、とおーくに青く動いている星から持ってきたもの」
「ああ、あのちっちゃな星のことね」
「青いだけでなんにもないのかと思ってたよ。すごくいいとこなんだね。見かけによらないね。行ってみたくなっちゃったよ…」
「くすっ、これね、そこの『夜』っていう時間にね、シーンとしてる時に、こっそりこっそり集めてきたの」
キャピは、その遠くの小さすぎる青い星での果物の収穫の様子を、集まったリャーサーたちにおとぎ話のように話して聞かせた。リャーサーたちは、フンフンと、興味深そうに眼を輝かせて聞いていた。
しばらくして、もう我慢できない! という感じで、リャーサーのいちる※1が立ち上がった。ラピィだ。
「これから、行ってくるよ! そして、ここにはない果物を持って帰ってくるね! ありがとう、キャピ!」
「うん、気を付けてね」
背中からパアーっと透明の大きな羽を広げて、ラピィは飛び立った。青いちっちゃな星に向かって。
さて、みんなで楽しみに待っていよう。
(続く)
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