第31話 美少女たちとのプール②
更衣室から出てプールで待っていると、急に目の前に女性たちが立ち塞がった。
普通の2人組みの女の人だ。俺何かしたっけ?
ね、どうする? どうしよう……と2人でコソコソ話したあとに、快活そうな方が俺に向き直って口を開いた。
「ちょっとすみません、今1人ですか?」
「えっ、いや……友達を待ってて」
「そうですか……あの、良ければ連絡先交換しませんか?」
「連絡先?」
「お兄さんかっこいいからこれからもできたら会いたいなって」
「でも……」
こういうときってシンプルに断ればいいんだろうか。
一瞬迷っていると、急に肩に両手を置かれた。びっくりして振り返ると、音海がいる。
「はるっち逆ナンされてるじゃーん」
「あぁ……今日はコンタクトを外してますからね」
「ごめんなさい、今から私たちその人と遊ぶ予定があるの」
「というわけで、あなたたちと春野くんは連絡先を交換できない」
上から順に音海、香月、綾瀬、泡羽である。
もはや会話を分割している域にきてるあたり、ほんとに仲がいいんだろう……なんて現実逃避していると、お姉さん方はそそくさと去っていった。
友達のレベル高すぎて無理! と大きな声で話している。
……まぁこの4人、元アイドルだったんだからな。
「あっ、ありがとう」
「いやぁもう、はるっちも油断ならないなぁ。逆ナンされるだなんてさ」
「いや、それは自分でもびっくりというか……なんでだろう」
「なんでってそれははるっちがかっこいいからでしょ」
「いや、それはない」
もしイケメンだったら、あんな地獄な中学時代を過ごしていたはずがない。
「なんか貴方って自己評価低いですよね」
「そうかな。わりと普通、だと思うんだけど……」
「まぁ、たしかにそうかもしれないわね。ずっと見てたけど、家事とかもちゃんとこなしてるのに……」
「家事……!?」
「あっ、単に家が隣で、だから何回か手伝ってもらっただけだから。ねっ、それだけ」
泡羽が声を上げ、綾瀬が慌てたように取り繕う。
「あっ、それよりどう思いますか? 水着」
香月がいたずらっぽく笑った。
今まで逆ナン事件で気が動転していたせいで気づかなかったけど、そうだ。今日はプールに来たんだ。
チラッと見ると、綾瀬は黒、泡羽は青、音海はシンプルな白、香月はチェックのビキニを着ていた。
全員、アイドルをしていただけあってべらぼうにスタイルがいい。
綾瀬はスレンダーな感じ、泡羽はメリハリがあって、音海は言わずもがな。香月は中学生離れしたスタイルをしている。
「どう?」
「い、いや……」
何となく期待されている答えは分かる。
だけどなんて言うか……微妙に恥ずかしいぞ、これ。
いや、微妙にどころじゃない。めっちゃ恥ずい。
「えっ、ええっと……」
「どうかな?」
今度はニヤニヤしながら近づいてくる音海。
絶対わざとだろ、これ。
「すっ、すごく似合ってる、と思う……」
「そっ、そか……」
どうにか絞り出す。
「あぁ〜えっと、じゃあ、あたし流れるプール行きたいんだけど」
「あっ、私も」
最初は流れるプールに行くことになった。
流れるプールで軽く流されていると、横にキュッと引っ付いてくる生き物がいた。否、泡羽だ。
「私、カナヅチだから……」
「そうなんだ……」
とは言っても、距離が近すぎる。
勉強会のときと言い、この前のなでなで事件のときと言い、泡羽は距離が近い。近すぎる。
泡羽の水着はそれほど露出してないと言えど、それでも胸の膨らみははっきりと分かってしまうようなものだった。
つまり。
いつもとは違うし、俺の中の何かが今にも死にそうだ。
「ひ、人前だし」
「大丈夫。ここ、カップルいっぱいいる」
「たしかにそうだけど……」
周りを見れば、カップルがみんな楽しそうにくっついてプールに流されている。
だから付き合っているなら普通かもしれないけど……俺たち付き合ってないんだよなぁ。
「ほら、音海さんたちにも見られるし」
「小夏たちは私が泳げないの知ってるから」
「あああ、そうなんだ……」
そうなれば、もはや反論のしようがない。
仕方ない。これは俺にかかっている。
いや、何もかかってないけど、なんかこう、何かがかかっているような気持ちになる。
覚悟を決めて流されていると、前の方を泳いでいた香月が近づいてきた。
逆流するプールをスイスイと泳ぐと、俺と泡羽を引き剥がす。
「風花ちゃんひっつきすぎです」
「だって泳げないから……」
「泳げないんだったら……み、湊にひっつけばいいじゃないですか!」
「でも湊あんま大きくないし……」
「湊運動だけには自信ありますから! というわけでほら、手を貸してください」
「うぅ……」
泡羽は香月に手を取られ、ついでに腕を絡めさせられた。泡羽は不満げな顔をしているが、香月は嬉しそうだ。とんでもなく。
「湊って本当に綾瀬たち大好きなんだな」
香月の周りには花が飛んでいる。
つまり会ったばかりのとき、俺に『お姉ちゃんたちは渡しません』と言ったのは……
大好きな綾瀬たちを、ただ
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