プール

第30話 美少女たちとのプール①

 バイトも1週間近く続けて、ほんの少し慣れてきた頃。

 泡羽と約束していたプールの日が来た。


 とりあえず買っておいた水着をカバンに入れ、さすがに眼鏡でプールに行くわけにはいかないから、コンタクトをつける。


「ひっさしぶりだな。コンタクト」


 いつもは眼鏡の方が楽だから、眼鏡にしている。高校に入ってからはずっと眼鏡だったから……半年ぶりくらいか。

 鏡に写る自分も、なんだか慣れない。


「よし。忘れ物は……ないな」


 カバンを持って立ち上がる。

 


 

 プールとは言えど、遊園地に併設されているプールだから、プールのあとも少し遊ぼうという予定だ。

 待ち合わせ場所の遊園地のゲートに着くと、泡羽が見つけて手を振ってくれた。いつもは下ろしている髪をポニーテールにしている。

 そして隣にいるのは……


「おはよう」

「おはよう、泡羽さん」

「風花、この人誰ですか?」

「誰って……春野くんだけど……」

「えっ!? 嘘! 嘘ですよ。だってこうもっと……なんかこう、モサっとしてたじゃないですか!」

「今日コンタクトにしたからね」

「えぇ……それで別人なんですね。ほんと誰かと思いましたよ……あっ、でも髪型は変わってませんね。湊安心しました」

「そ、そう……」


 香月は納得したような顔をしたが、なんとも言えない気持ちになる。

 あと泡羽の口調から2人きりで遊ぶ感じかと思ってたけど、まさかメンバーで約束してたのか。それなら俺がその中に入るのってお邪魔になるんじゃ……

 

「でもそれにしても、なんで貴方がいるんですか? ていうか、風花もこの人に教えてました? 私たちがプールで遊ぶ日」

「うん」

「どうして湊に言ってくれなかったんですか!」

「サプラーイズ」


 真顔で言うからシュールだ。

 香月がそんな泡羽に食ってかかる。

 

「サプライズになってませんよ! たしかにお姉ちゃんたちはなってるかもしれませんよ……でも私からしたら絶対嫌です! この人とお姉ちゃんたちを会わせたくありません!」

「でも小夏もアイナもはりきってたし……」

「それが嫌なんですよ!」

「どうして?」

「どうしてって……とにかく嫌なんです!」


 そこまで嫌われてたのか、俺……

 あとお姉ちゃんって、綾瀬たちのことだったんだな。同じグループで、しかも年上だからそう呼んでるのか。


「そうは言っても、もう呼んじゃったし……あとアイナたち、もう来てる」

「え!? ほ、ほんとだ……」


 振り返ると、泡羽の言葉通り、後ろには綾瀬たちがいた。

 綾瀬はツインテールなのは変わらないけど、いつもより低い位置にしている。音海はバイトスタイルのお団子だった。

 2人は俺の姿を見て驚いたように突っ立っていた。

 

「はるっちじゃん。なんでいるの?」

「は、春野くん!?」

「私が誘った」

「風ちゃんナーイス!」

「まさか呼んじゃうとは……」

「はるっちおはよう」

「お、おはよう」

「これで全員だね。じゃあさっそく並ぼうか」


 音海の一声で、みんなで列に並ぶ。

 一応それなりに人気な遊園地というだけあって、既に混んでいる。たぶん昼近くなったらもっと人が集まるだろう。

 

「まずさぁ、絶対プールは最初に行くじゃん。混むだろうし」

「そうね。プールがメインだし」

「お昼になったら出て、ご飯食べて、そっからアトラクション乗ろっか」

「それが1番でしょうね」

「こうなったらアトラクションも色々乗りたいもんなぁ」

「湊、ジェットコースターに乗りたいです」

「ジェットコースターね。いいよね。あっ、はるっちはジェットコースターとかいけるタイプ?」

「あっ、うん。全然いける」


 小学生のときは、遊園地と言えばジェットコースターだった。だいぶ乗りまくってた記憶があるから、大丈夫だろう。

 

「よしっ。じゃあジェットコースター乗るか。今日は乗りまくるぞ!」

「小夏それじゃ趣旨代わってる」

「風ちゃん、こういうのは楽しまなくちゃ。雰囲気ふんいき」

「たしかにそうですね。やはり何に置いてもムード作りが大事ということで……」

「ばっ、やめなさい湊ちゃん」

「だって、湊のセンサーが……」

「何そのセンサー!?」


 話しているうちに列は進み、中に入る手続きを済ませる。フリーパスを買って1歩踏み出すと、そこはもう別世界だった。

 

「うわっ、やっぱ中に入ったらキターって感じするね」

「そうね。遊園地ってここも醍醐味よね」

「懐かしいなこの感じ」

「春野くんは久しぶりなの?」

「うん。だいぶ久しぶり。ここの遊園地は初めて来たけど、どこも遊園地って感じは似てるんだな」


 泡羽に尋ねられて答える。

 中学のときは全く行かなかったんだよな。

 小学生ぶりだから……ちょうどまる3年は行ってないか。

 

「まぁなんか、ワクワク感みたいなのは一緒よね。非日常な感じ」

「ですね……あっ、あっちプールみたいです。更衣室はその近くにありますね」


 パンフレットを見ていたちょうど前の方向を香月が指をさす。


「このまままっすぐ行けばいいのね」

「もうさっさと着替えちゃおうか」


 音海の言葉にみんな同意する。

 

 5分程度歩くと、すぐに更衣室の入った建物は見えた。

 

「今から着替えてくるから、はるっちごめんけど、ちょっと待ってて……あっ、覗いちゃダメだからね」

「覗かないよ!」

「分かってます。じゃ、楽しみにしてて。みんなで水着選んだの」


 音海がそう言い、みんなが女性側の更衣室の方に消えていく。

 俺は1人男子更衣室の方へと歩いた。

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