鬼 遊戯(おにごっこ)

風見星治

1話 帰郷

 久しぶりに故郷へ帰って来た。ここ最近は残業続きで碌にリフレッシュも出来なかったから、たまには世間の喧騒を忘れて田舎でゆっくり……と、そう考えた訳だが、やはりここは何もないなと、改めて周囲を見回す。


 牧歌的な田舎の風景そのままの周囲は緑、緑、緑、その中にポツンと一軒家。そんな景色が等間隔で続く生まれ故郷は見事なまでに何もない。そして茹だる様な暑さと湿気、蝉の声。


「しっかし、久しぶりね。何年振りかしら?」

「確か2年だろ?ホントはもっと早く帰ろうかと思ってたんだが、マスターアップ直前のデスマーチでアパートにさえ帰れなかったからなぁ。」

「身体壊す前に休みなさいよ。死んだら元も子も無いんだからね。」

「あぁ。」


 何の屈託もない母とのやり取りは、ソレまで精神をすり減らしっぱなしだった俺の心に少しだけ染み渡った。

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